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2008年12月19日(金) 12時01分

<無保険の子救済>頭痛隠し登校 横須賀の少女「うれしい」毎日新聞

 「(法律が変わるのは)うれしい。病気すると、どうしても我慢できない時がある。いざという時に保険証がないと……」。両親の困窮から約3年半にわたって「無保険」状態におかれた神奈川県横須賀市の中学1年生の少女(13)は、19日の改正国民健康保険法の成立を喜んだ。これまで親が保険料を滞納した場合、医療費の全額自己負担が必要となり、貧しい家庭の子どもたちは病院に行けなかった。関係者からは法改正を評価するとともに、さらなる課題を指摘する声が上がった。【平野光芳、深尾昭寛、竹島一登】

 この少女は、頭痛がした小学生の時の朝も家族には隠した。両親が外出後、体温計をあてると37.5度。「親に心配を掛けられない」の一心で登校したが、授業中に様子を案じた担任教諭から「保健室で寝ていなさい」と言われた。

 保健室で39.5度に上昇。友達が抱きかかえるようにして家へ送った。帰宅した親は困ったが、病院行きは見送り市販薬を飲んだ。そんなこともあり、少女は「体調が悪い時は親にバレないように、『勉強するから入ってこないで』とか言って、自分の部屋に閉じこもった」という。

 父親(46)は塗装会社を退職後に仕事が見つからず、半年後にはアルバイト先の建設現場で、足場から転落して左足じん帯を損傷。失業保険もないままアルバイトさえできなくなり、月約4万円の保険料は払えなかった。4年前に乳がんの摘出手術を受けた母親(38)の受診も途絶えた。父親も「子どもだけはどうしても助けたかった。まさか、こんなに早く法律ができるとは思わなかった」と安どの表情を浮かべた。

 困窮世帯の支援に取り組んできた大阪府寝屋川市の内科医院「徳本クリニック」の事務長、田中宏さん(64)も「さまざまな声が国を動かした」と評価した。改正法の施行は来年4月。「冬場は風邪を引きやすい。自治体は一刻も早く子どもに保険証が届くように配慮してほしい」と前倒しの保険証交付を求めた。市民の生活相談を行う千葉県市原市の及川幸紀市議も「今回の運動を通じて、役所の窓口対応もずいぶんと変わってきたと思う」と評価した。

 無保険世帯の支援を行う徳島県の住民団体の竹田節夫事務局長(59)は「対象年齢は18歳まで広げる必要がある」と今後の課題を挙げた。「病院に行けないというのは子どもだけでなく、お年寄りなど生活弱者も同じことだ」と、後期高齢者医療制度にも運動を拡大する考えだ。

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