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2008年12月19日(金) 09時47分

マイクロソフトのオープンソース戦略“大転換”——その真意とは?Computerworld.jp

 Microsoftは、2008年7月に買収した米国Powersetからセマンティック(自然言語)検索エンジンを獲得したが、同時に「HBase」コンポーネントに含まれるオープンソース・コードも手に入れた。同社は、これを機にオープンソースに対して友好的な姿勢を鮮明に打ち出し、オープンソース技術の導入を“最優先のシナリオ”だとアピールし始めている。果たしてその真意はどこにあるのか。

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 マイクロソフトがオープンソース・コードの一部を獲得したHBaseは、Apache Software Foundationがオープンソース分散コンピューティング・プラットフォーム「Hadoop」の分散データベースとして開発が進められているプロジェクトで、旧Powersetではオープンソース・コードを供与するなどの貢献活動に積極的に取り組んできた。Microsoftは、Powersetの買収を機にオープンソースに対してより友好的な姿勢を打ち出しつつある。

 Microsoftのオープンソース戦略の今後について、同社プラットフォーム戦略グループ担当シニア・ディレクター、ロバート・ダフナー(Robert Duffner)氏は、「当社はこれまで自社ソフトウェアにプロプライエタリ技術しか採用してこなかったが、“自社製品にオープンソース技術を導入する”という今後の取り組みは、最優先すべきシナリオだ」と明言している。

 買収したテクノロジーをそのまま使って、元PowersetのスタッフによるHadoopへのコード貢献を認めるというMicrosoftの方針について、ダフナー氏は、オープンソースに対するMicrosoftの考え方と戦略の転換を示すものだと断言したうえで、「イノベーションは広範なテクノロジーを横断して生まれる」という新たな認識の下、オープンソースに対してより友好的に接していくことを意味すると説明する。

 Microsoftは2008年7月に、「ADOdb」と呼ばれるPHP(Hypertext Preprocessor)プロジェクトへのコード供与を開始し、初めてオープンソース・プロジェクトに対してコード貢献を行った。PHPはフリーで提供されているオープンソースのスクリプティング言語で、Web開発言語としてデベロッパーの間で広く使われている。

 Microsoftでプラットフォーム戦略担当シニア・ディレクターを務めるサム・ラムジ(Sam Ramji)氏が率いるダフナー氏のグループが進めるこうした取り組みからは、Microsoftのオープンソース・ソフトウェアに対する姿勢の変化が見て取れる。つまり、自社ソフトウェアと効果的な相互運用性を確保したい技術としてだけでなく、Microsoftの事業目標とIT業界全体の両方に恩恵をもたらす技術として受け入れようとしているのだ。

 しかし、これまで長い間オープンソースと Windowsに代表されるプロプライエタリ・ソフトウェアとを「敵と味方」の関係と位置づけてきたMicrosoftが、いきなり「双方は決して相互排他的ではなく、補完し合うことができる」と訴えたとしても、果たして顧客の心をつかむことができるのだろうか。

(Elizabeth Montalban/IDG News Service ニューヨーク支局)

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