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2008年12月19日(金) 11時50分

「長靴投げ世界選手権」や「武器としての靴」WIRED VISION

12月14日(現地時間)、イラク人記者がGeorge W. Bush米大統領に靴を投げつける事件が起きた。Bush大統領は、サイズ10[日本サイズでは28]の靴を両方ともすんでのところでよけたが、この事件は本格的な社会現象(日本語版記事)へと発展した。そこでワイアードニュースのブログ『Danger Room』では、靴を使った兵器についてさらに詳しく考察してみたい。

投げられたブーツ型の靴は、昔からある非殺傷兵器だ。だが厳密に言えば、危険物に分類されるかもしれない。非殺傷性砲弾の設計に関する米陸軍の記載には、「非殺傷兵器に分類されていても、運動エネルギーが58フィート重量ポンドを超える衝撃を与えると、当たった相手を死に至らしめる危険性があることは一般に認められている。この場合に受ける衝撃は、プロのピッチャーが投げる野球のボールに当たったときの衝撃の約半分だ」と書かれているからだ。

それに、かなりの力でブーツを投げられる人たちもいる。ゴム製長靴を投げる現代のスポーツ「Wellie Wanging」は、英国のヨークシャー地方が発祥の地のようだが、他の場所でも独自に考案された可能性はある。

ニュージーランドでも有名な競技会が開催されている(同国のタイハペは、わが町こそが「世界の長靴投げの中心地」だと主張している)。だが、2009年の6月25日(現地時間)から29日にかけて行なわれる国際大会『長靴投げ世界選手権』の開催地はフィンランドだ。

2006年に開催された靴投げイベント

世界選手権の厳しいルールに従うと、「Wellie Wanging」と呼ばれる競技の世界記録は219フィート(66.75メートル)強だ。手で投げた長靴が実際の戦闘でどの程度威力を発揮するかは疑問だが、「長靴投げロボット」のようなものが将来開発されれば、戦闘能力が向上する可能性はある。

一方、靴そのものの戦闘力を高める手もある。

2001年にアメリカン航空機を爆破しようとしたテロリストのRichard Reid容疑者が身につけていた靴爆弾は、ペンスリット(PETN)という強力な爆薬を詰めたプラスチック爆弾で、不安定な過酸化アセトン(TATP)が起爆剤として使用されていた。

Reid容疑者は身長約193センチで、履いていたスニーカーの底は、左右それぞれ約140グラム強の爆薬を詰められるほど大きかったと推定される。専門家は、これだけの量の爆薬があれば、まず間違いなく航空機を墜落させられたとみている。

靴爆弾は新しいアイデアではない。第二次世界大戦中、英国の特別作戦部(Special Operations Executive:SOE)は、ドイツ軍の破壊工作員が「長靴のかかとや底」に見せかけて爆発物を密かに持ち込もうとした計画を暴いた。

石炭の塊や車のバッテリー、ベルト、『Smedley's English Red Dessert Plums』の缶詰に似せた爆弾もあった。SOEの工作員自身も、長靴の底に戦闘用の小型ナイフや、有名なFairbairn-Sykes型の全長3インチ(約7.6センチ)のコマンド・ナイフ(対人殺傷用ナイフ)など、様々な道具を仕込んでいた。

なお、ジェームズ・ボンドシリーズの『ロシアより愛をこめて』にも、毒のついたナイフを仕込んだ靴が登場した。作者のイアン・フレミングはこの毒をフグの毒だとしており、12秒以内に死に至ったが、現実では4時間から5時間からかかり、その間に病院に行けることだろう。[フグの毒には解毒剤や血清は開発されておらず、神経毒であるテトロドトキシンによる呼吸困難が収まるまで人工呼吸器をつなげることが唯一の治療法となる]

[過去記事「靴底に「水筒」内蔵のサンダル:警察当局は警戒」では、以下のサンダルを紹介している]

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081219-00000000-wvn-sci