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2008年12月19日(金) 19時53分

<足利事件>DNA再鑑定へ…再審請求で初 東京高裁決定毎日新聞

 栃木県足利市で90年、保育園女児(当時4歳)が殺害された事件で殺人罪などに問われ無期懲役が確定した菅家利和受刑者(62)の再審請求の即時抗告審で、東京高裁はDNA型の再鑑定を行うことを決めた。田中康郎裁判長が19日、検察側と弁護側に伝えた。再審請求でDNA鑑定を再実施するのは初めて。

 再鑑定は来月下旬から始まり、検察側と弁護側が推薦する鑑定医2人がそれぞれ、女児の着衣に付着した体液と菅家受刑者のDNA型が一致するかどうか調べる。仮に一致しなければ、再審が開始される可能性が高まる。

 事件は90年5月に発生。駐車場で遊んでいた女児が連れ去られ、近くの河川敷で遺体が見つかった。県警はDNA型が一致したとして菅家受刑者を逮捕。1、2審とも無期懲役を言い渡し、最高裁が00年、初めてDNA鑑定の証拠能力を認め、刑が確定した。

 弁護側は、菅家受刑者の毛髪のDNA型を独自に鑑定したところ異なる型だったとして、02年12月に再審を請求。宇都宮地裁が2月、「本人から採取したDNAで鑑定した裏付けがない」と却下したため、弁護側が高裁に即時抗告していた。

 佐藤博史弁護人は19日、東京都内で会見し「画期的な判断。無実が証明されることを望む」と話した。【伊藤一郎】

 ◇菅家受刑者の手記

 菅家受刑者は今月、収容先の千葉刑務所から毎日新聞に手記を寄せた。要旨は以下の通り。

 私は無実なので、DNA再鑑定に期待しています。警察や検察は、私が事件のことは何も知らないと言っても全然分かってもらえませんでした。父は、私が警察に連れて行かれたショックで亡くなりました。母も昨年4月に亡くなりました。母も非常に苦しんだと思います。DNA再鑑定で再審無罪になり、兄弟に会えることを信じています。

 ◇解説…飛躍的に精度向上、注目される再鑑定

 この事件は、警察が89年にDNA鑑定を犯罪捜査に導入した直後に起き、弁護側は「当時の鑑定は信用できない」と主張している。鑑定精度は飛躍的に進歩しており、現在の技術による再鑑定の結果が注目される。

 ただ証拠の体液は捜査段階の鑑定でほとんどが使われ微量しか残っていないとされ、保管状態が悪ければ「鑑定不能」となる可能性もある。押田茂実・日大教授(法医学)は「DNA型の鑑定は優れた技術だが、資料が失われて再検証できないケースも多い。再鑑定用の資料を残すことが基本だ」と指摘する。

 米国で90年代以降に冤罪(えんざい)と判明した125事件のうち、6割以上はDNA鑑定が決め手となったという研究もある。日本でも、DNA鑑定を真の容疑者発見のために使うだけでなく、冤罪を晴らす有効な「武器」として活用すべきだろう。【伊藤一郎】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081219-00000099-mai-soci