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2008年12月17日(水) 13時53分

<泰葉・ロングインタビュー>(1)「最後の8分」に後悔はない毎日新聞

 今年の芸能界をにぎわせた人といえば、泰葉(やすは)さん(47)を忘れるわけにはいきません。17日にシングルとしては86年以来となる「お陽様よほほえんで」(アイアンキャンドル)をリリースした泰葉さんが、歌にかける思い、年末の「ハッスル・マニア2008」(30日・有明コロシアム=放送は31日午後9時半、テレビ東京系)参戦について、そしてこれからについて語ってくれました。【聞き手・油井雅和】 

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 ◇谷村新司さんが教えてくれた

 −−まずは毎日新聞社から出たばかりの、ねぎし三平堂・編「昭和の爆笑王 ご存じ 林家三平傑作集」をお渡しします。お父様である林家三平師匠のネタがたっぷり収められています。ほとんどの方は三平師匠のごく一部しかご存じでないと思いますが、あの当時に自らの体を壊してまで、かなり辛口の時事ネタも含めてこれだけのネタを作っていたとは、この本を読みますと、ただただ驚くばかりです。実際の高座が頭の中によみがえってきます。

 泰葉:わあ、ありがとうございます。でも、本にまとめるには、リズム感が大変だったでしょう。うちの父は独特のリズムでしたから。

 −−ネタが全然古くなってません。そして三平師匠が「昭和の爆笑王」と呼ばれたわけがすごくよくわかります。今の芸人さんに買っていただきたいと思いました。

 泰葉:これ売れそうですね。うちの父、ディープインパクトだな。

 −−さて、いよいよ17日に新曲「お陽様よほほえんで」が発売です。作詞、作曲とも泰葉さんご自身の作品ですが、この詞の世界はかなり抽象的なものになっていますね。聴く側はどう解釈すればいいでしょうか。

 泰葉:それぞれの思いで解釈していただいていいんです。ゆるゆるに作っています、わざと。今の詞は「キミ」と「ボク」の、1人称と2人称だけで完結してるのが多いなあと思った中で、ちょっとスケール感を出したい。ちょっと訳分からないところがあってもいいかなあと。谷村新司さんから教えていただいたテクニックであるんですけど、すっごい面白いんです。ちょっと企業秘密ですけれど。勉強しました。この詞がちょっと抽象的で分かりづらいという意見があると思うんです。だけど、いろんな詩人の方の作品を読んで、(聴いた人)それぞれが、思いをぶつけてくださればいいと思って。あえて誰の忠告も聞かずこれでいくと、突破しました。

 ◇「大聖堂」は追悼の曲

 −−カップリング曲の「大聖堂」は、とても深いイメージの曲という評判ですが。タイトルも珍しいですね。

 泰葉:これはヒントいただいたのは、レイモンド・カーヴァーの村上春樹さん訳の短編集で「大聖堂」というのがあるんです。ばっと読んだときに「あ、タイトルはこれ」と。これは追悼の曲で、田渕久美子先生(NHK大河ドラマ「篤姫」の脚本家。泰葉と共同事務所を設立したが後に移籍)のだんなさん(岡島瑞徳氏)が亡くなったときに生まれた曲なんです。彼は「篤姫」の成功の「陰の功労者」ですが、最後に電話したときは病魔に冒されているときで。ちょうど田渕先生といろいろあったので、私は暴言を吐きまくったのを全部聴いてくださって、「じゃ、わかった」ということで終わった電話でお別れしてしまった。病気であと幾日か、というときに、苦しんで苦しんで生まれた曲です。

 −−マスコミに話題になる前のブログ(現在は終了)でも、このことをお書きになっていましたね。ブログでは泰葉さんが言いたいことをずっとやってこられたのが分かりました。その後、エスカレートしましたが……。

 泰葉:壊れました。

 ◇「大銀座落語祭」成功の裏に…

 −−今年を振り返ると、ほとんど報道されていないことが二つあるので、ここで触れたいのですが。一つは今年で終了した「大銀座落語祭」です(04〜08年、7月に開催)。「落語界を活性化させる」という大きなプロジェクトに、裏方として頑張ってこられたことを、ほとんどの人はご存じないと思うんです。

 泰葉:ああ、そうでしょうね。私はほとんど(表に)出なかったので。

 −−泰葉さんの落語に対する思い、もちろん来年、二代目三平を襲名する弟、林家いっ平師匠のお世話もされてきましたが、この数年間、離婚前後からはいろいろありましたが、落語の活性化にすごく力を入れてましたね。

 泰葉:ありがとうございます。大銀座落語祭をスタートしたときには本当に大変で、銀座の応援もなく、勝手にホールを借りて「大銀座落語祭」って。妨害もあり、そこから立ち直り。3年目でしたっけ、銀座の街が応援してくれたのは。銀座とのパイプをつなげたのは私です。はっきりここで言わせていただきます。銀座の方はとてもやさしくておおらかでしたが、老舗の方なのでプライドが高い。そこをどうやってつなげるか、私は本当に毎日、日参していました。けんかもしましたし。やっと銀座の街とつながりができて、通りに落語祭のフラッグが立ったんです。

 −−あのフラッグは目立ちましたね。銀座の通りにずらりとフラッグが立って…

 泰葉:あれは泣きましたね。夜中の3時にクレーン車で掲げている下に行って。号泣してましたから。「やった」とか言って。

 ◇「最後の8分」に後悔はない

 −−だからこそ、聞きたかったのですが。この間の「終結会見」では「最後に8分時間をください」と言って、「(元夫の春風亭)小朝師匠を(三遊亭)円朝(初代は落語中興の祖といわれる落語界の大名跡)にさせてください」と最後の願いを訴えられました。よくあの場で言われたなあ、と思ったんですが。

 泰葉:落語に関する思いは父の血がありますし、すごかったですね。「大銀座落語祭」で上方の師匠、それから、垣根を越えていろんな師匠ともお話できたし、だからこそ言えるんですね。師匠方とのつながりが非常に強いと勝手に自負しているんで。最後は私が夢を語って終わったけど。

 −−でも、あの場で8分間、夢を語ったというのは後悔していないと…

 泰葉:後悔していません。あれがなかったら私立ち直れなかったかもしれない。あの8分間に私、すべてを賭けてました。

 −−そうでしたね。会見の最後はフラフラでしたね。

 泰葉:はい。

(その2「『篤姫』成功を信じていた」につづく)

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