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2008年12月17日(水) 11時45分

日本郵政の株式上場時期 2010年度も「困難」で見直しJ-CASTニュース

 日本郵政グループの株式上場をめぐる動きがあわただしくなっている。日本郵政の西川善文社長が2008年12月9日の衆院総務委員会で、2010年度を目標とする株式上場について「金融情勢の変化や市場の状況を考えると、再来年度の上場は実質上、たいへん難しい状況になっている」と、初めて踏み込んだ発言を行った。日本郵政グループの10年度の上場が困難であることは、市場関係者の間では「もはや常識」となっているが、西川社長が公式の場で「本音」(日本郵政関係者)を口にしたのは初めて。自民党は09年1月をめどに「郵政事業検討・検証プロジェクトチーム(PT)」が郵政民営化の見直し案をまとめる予定で、「PTに向けたメッセージ」と見られている。

■仮に上場したとしても、それにふさわしい収益性を示せない

 日本郵政グループは持ち株会社の日本郵政と傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険を「早ければ10年度、遅くとも11年度」に上場することを目指している。この上場目標は法律で厳密に定められているわけではないが、西川社長自らが定めた民営化推進の公約だった。10年度の上場目標については、麻生太郎首相が11月19日、「株が下がっている時に、しゃにむに売らなきゃいけないって、そんなアホな話はない」と、株式売却凍結を示唆し、物議を醸した。しかし、西川社長は同28日の中間決算発表の会見では「私どもは現行法に則って、粛々と事業運営を進めていく」と述べ、上場目標に基本的に変更がない考えを示していた。

 西川社長が国会で上場目標が困難であることを認めたのは、リーマン・ショック後の株式市況の悪化だけが理由ではない。最大の理由は「仮に上場したとしても、市場の評価を受けるだけの収益性を今の日本郵政グループが示せないことにある」(市場関係者)と見られている。日本郵政は民営化したといっても、新たなビジネスモデルが描けていないからだ。

■預金量も保険の新契約件数も減少が続く

 日本郵政グループの収益の柱であるゆうちょ銀行の預金量は99年度の261兆円をピークに毎年ほぼ10兆円ずつ減少が続く。この傾向は郵政民営化後も変わっていない。最近は経営努力で預金残高の減少に多少の歯止めがかかったようだが、大きな反転には至っていない。かんぽ生命保険の新契約件数も92年度の956万件をピークに減少傾向が続く。「このままゆうちょ銀行もかんぽ生命も収入が減り続け、国債を中心に運用するだけの旧態依然の手法では、10年度の上場など無理」というのが、市場の見方だ。そのことは日本郵政幹部、とりわけ西川社長自身が最も自覚しているはず。

 来春の郵政民営化見直しに向け、日本郵政グループが政府・与党を巻き込み、上場目標の軌道修正を図るのは必至の情勢だ。


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