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2008年12月17日(水) 12時24分

<年金>86歳女性、31年ぶり受給権…でも支給、来夏から毎日新聞

 社会保険庁のずさんな管理で年金記録が宙に浮き、資格を満たしながら無年金状態になっている高齢者が多数いる。30年以上無年金だった東京都内の女性(86)は7月、記録が見つかって受給権が回復したことが分かった。女性は本来、月額10万円、総額数千万円の年金が受け取れるはずだったが、70代後半まで働きづめで倒れ、今は寝たきりになっている。支給開始は来年8月になる見通しだ。【野倉恵】

 義弟(69)が16日の民主党の会合で証言した。義弟や女性の訂正後の記録によると、女性は1948〜77年の20年11カ月間、大手都銀の電話交換手などで働き、厚生年金保険料を納めていた。女性の年齢では20年間納付すれば55歳から受給できるはずだったが、20〜30代に勤めていた時の記録72カ月分が宙に浮き、年金をもらえず、働き続けた。女性は98年、初めて社保事務所に相談に訪れたが、義弟によると「納付期間が足りないと言われそのままあきらめた」という。

 ◇働きづめ、病に倒れ寝たきり

 女性は01年に脳出血で倒れ入院。会話ができず寝たきり状態が続いている。無年金状態を疑問に思った義弟が1月、社保事務所に照会。72カ月分の記録が生年月日の違う別人の記録として宙に浮いていたことが7月に判明した。支給は来年8月になる見通しで、義弟は「姉は70代後半になっても青果市場で野菜の仕分けをして働いた。年金をもらえていたら人生は違っていたはず。社保庁はなぜきちんと調べなかったのか。生きている間に支給してほしい」と訴えている。女性は今、年金の受給について認識できない状態という。

 社保庁の推計では、07年4月時点で、今後納付し続けても納付期間が25年に満たず、受給資格を得られない人は計118万人いる。5、6月だけで、漏れた記録が見つかり受給権を回復した高齢者は全国で35人。見つかった時点で既に死亡していた人が3人いて、受給を待つ間に亡くなった女性もいた。

 社保庁は「社保事務所の対応については調査中」としている。

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