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2008年12月16日(火) 03時05分

29万人の判断さまざま…裁判員候補者の回答票締め切り読売新聞

 来年5月に始まる裁判員制度で、来年末までの裁判員候補者として名簿に登録された人が辞退希望などを回答票に記入して裁判所へ返送する期限が15日、締め切りを迎えた。

 「仕事の融通は利く」と辞退を希望しなかった人、子供の夏休みを理由に「7、8月は参加しにくい」と申し出た人。裁判所の通知を受けとってから約2週間、全国約29万5000人の裁判員候補者たちはそれぞれが抱える事情と向き合った。

 「選挙で投票するのと同じように、国民としての義務はちゃんと果たさないといけない」。鳥取市内に住む50歳代の男性は、通知に同封されたパンフレットをじっくり読み、辞退を希望しないことに決めた。

 10人余の従業員を抱える会社の役員。「仕事上の都合」を理由に、参加が難しい時期を選ぶことができたが、「私1人が抜けるだけなら代わりはいるし、融通は利くから大丈夫だ」と思った。通知を受けた後、刑事裁判のニュースへの関心が前より高まったという。

 三重県内の30歳代の男性公務員も、裁判所に回答票を返送しなかった。「1か月半ぐらい前に呼び出し状が来るから、それから準備しておけば3日ぐらいはカバーできる。職場のみんなも温かく送り出してくれるだろう」と迷いはなかった。

 福岡市内の50歳代の主婦も回答票は手元に置いたまま。ただ、「自分に当てはまる辞退の理由が見つからなかった。裁判員になって、被告の人生に影響を与えることには不安だけど……」と戸惑いも隠せない。

 「子供が楽しみにしている夏のキャンプの時期は譲れない」。北海道網走市内に暮らす30歳代のトラック運転手の男性は、小学生の娘の夏休みにあたる7月と8月は「養育」を理由に辞退を希望する旨を回答票に記入し、返送した。

 家族そろってのアウトドア派で、夏の間は3回ほど道内でキャンプを楽しんでいる。花火大会などに時期を合わせて出かけているため、日程をずらすことはできない。辞退が認められるかどうかは裁判官の判断次第だが、「秋から年末にかけては仕事も忙しいから、辞退を希望できる月が2か月では足りないというのが本音。せめて希望した時期は外してほしい」と訴えた。

 裁判所は裁判員候補者の個別の事情を把握するため、参加が難しい時期を最大2か月まで回答票に記入してもらい、事件ごとに候補者を呼び出す際の参考にする。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/20081128-033595/news/20081216-OYT1T00089.htm