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2008年12月16日(火) 14時11分

<英国人準強姦致死>織原被告に逆転「無期」 東京高裁判決毎日新聞

 92〜00年に英国人ルーシー・ブラックマンさん(当時21歳)ら女性10人に薬物を飲ませるなどして性的暴行を加え、うち2人を死なせたとして準強姦(ごうかん)致死罪などに問われた会社役員、織原(おばら)城二被告(56)の控訴審判決が16日、東京高裁であった。門野博裁判長は、ルーシーさん事件を無罪とした1審・東京地裁判決(昨年4月)を破棄した上で、死体損壊・遺棄罪などが成立すると指摘し、改めて無期懲役を言い渡した。

 1審は求刑通り無期懲役としたものの、ルーシーさん事件については「暴行や薬物投与を証明する直接証拠がなく、第三者が関与した可能性も否定できない」と無罪を言い渡し、暴行場面を撮影したビデオテープが残っていた他の9事件を有罪とした。このため「ルーシーさんも織原被告が死なせた」とする検察側と、無罪を主張する弁護側の双方が控訴していた。

 門野裁判長は、織原被告がチェーンソーやセメントを購入し、ルーシーさんの友人に生存を偽装する電話をかけた経緯から「ルーシーさんの遺体を切断して洞窟(どうくつ)に遺棄したと認められる」と述べ、死体損壊・遺棄罪を認定した。

 さらに他の事件との類似性などから、ルーシーさんに睡眠薬を飲ませて暴行しようとしたことも認めたが「薬物を吸引させて暴行し、それが原因で死亡したとまでは断定できない」と指摘し、準強姦致死罪は成立せず、準強姦未遂罪にとどまると判断した。

 警視庁はルーシーさん失跡直後の00年7月に公開捜査を開始し、同10月に織原被告を別事件で逮捕。01年2月にルーシーさんの切断遺体を神奈川県三浦市の洞窟で発見し、再逮捕した。織原被告は一貫して否認しているが、1審公判中に「お悔やみ金」としてルーシーさんの遺族に1億円を支払っている。【伊藤一郎】

 ▽織原被告の弁護人の話 本人の意向を聞いていないが、今までの主張からすると上告すると思う。

 ▽鈴木和宏・東京高検次席検事の話 無期懲役を維持した点は妥当だが、準強姦未遂の限度でしか認定しなかった点は誠に遺憾だ。

 ◇ルーシーさん母「真実と正義証明された」

 判決後、ルーシーさんの母ジェーン・スティアさんが東京都千代田区の英国大使館で会見し「事件から8年以上、厳しい試練に耐えてきたが、織原被告が有罪となり、ルーシーだけでなくすべての性犯罪被害者のために真実と正義が証明された」と語った。ジェーンさんが織原被告を目にしたのはこの日の法廷が初めて。「織原被告と会い、裁判所で事件の詳細を聞くのはつらかった」と言葉を詰まらせた。【岩佐淳士】

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