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2008年12月16日(火) 18時18分

焦点:イラク人記者の靴投げ、米ブッシュ政権への根強い反感の表れロイター

 [ベイルート 15日 ロイター] バグダッドで14日、イラクを電撃訪問していた米国のブッシュ大統領らの記者会見に出席したイラク人記者が、暴言とともに同大統領に靴を投げ付ける騒動が起きた。
 この記者は、イラクのテレビ局アルバグダディヤのムンタゼル・ザイディ記者。ブッシュ大統領を「犬」などと呼び靴を投げ付けた。アラブやイランのテレビ局は騒動後にこぞって、当時の映像をスローモーションを交えるなどして、繰り返し放送している。
 靴を投げ付ける行為は中東では最大の侮辱行為とされており、イラクでは2003年の旧政権崩壊後、フセイン元大統領の銅像が倒された際に市民が靴で銅像をたたく様子が記憶に新しい。
 「これがイラク国民からの別れのキスだ、犬め」などと叫んで靴を投げ付けたムンタゼル・ザイディ記者だが、地元でにわかに英雄視されている。イラク政府が同記者の行為を「野蛮で恥ずべき行為」と非難した一方、国外では、イスラム教徒のウェブサイトが同記者を「ライオンの心臓を持った英雄」と称えるなど、賛否両論となっている。
 サウジアラビアの民間企業に勤めるアブ・フェイサルさんは「(ムンタゼル・ザイディ記者は)勇敢で、われわれに誇りを感じさせた。ブッシュ(大統領)は(イラクを)破壊したのだから、たしかに靴で打たれるべきだ」などと語る。
 一方、サウジアラビアの大学で講師(社会政策学)を務めるKhalid al-Dakhilさんは、同騒動について「理解はできるが、(高等)教育を受けたアラブのジャーナリストにしては、ブッシュ氏への怒りを表現する方法として賢明でも建設的でもなかった」と見ている。「西側諸国は、これでアラブ社会のステレオタイプなイメージを強めることとなる」という。
 <オバマ次期米大統領には期待>
 イランでは、同国の核問題に米国が圧力をかけるなか、ブッシュ米大統領に対して好意的なコメントをする人々はあまりいない。
 年金生活者のアサドラ・ゴルバニさん(67)は「(ブッシュ氏は)米国に恥辱を残した。その名は間違いなく後世まで語り継がれ、その悪行は永遠に記憶されるだろう」と話す。
 レバノンの一部の政治アナリストたちも、ブッシュ大統領が中東地域で行った政策の数々に対しては、同様に厳しい目を向けている。ベイルート・アメリカン大学のヒラル・カシャン教授(政治学)は「最悪と言っても足りないくらい。(ブッシュ氏が)できる最善のことはホワイトハウスから出て行くことだ」と辛らつだ。
 また、イスラム教シーア派組織ヒズボラに関する専門家、アマル・サード・ゴライエブ氏は、靴を投げた記者は横断幕やポスターを掲げるよりもずっと効果的な抗議手段を見つけたのだと主張する。
 中東地域の多くの人々は今、過去の落胆にもかかわらず、米国の次期大統領バラク・オバマ氏に期待を寄せている。
 エジプトのマヘル元外相は「もうどん底を付いたのだから、今後はどんな変化があったとしても歓迎されるだろう」との見方を示した。
 (ロイター日本語ニュース 原文執筆:Alistair Lyon、翻訳:植竹 知子)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081216-00000694-reu-int