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2008年12月15日(月) 14時53分

「検察を理解して」職員動員し説明会2万4千回…裁判員制度読売新聞

 来年5月にスタートする裁判員制度で、全国の検察庁が「全職員が広報官」を掲げた市民向けの説明会を頻繁に開いている。

 説明会の回数は昨年4月以降、職員数のおよそ2倍の約2万4000回に。裁判員に選ばれた人に検察側の主張を理解してもらえるよう、今のうちから市民との接点を広げたいという思惑もある。

 今月3日夜、東京・渋谷区内の会議室。東京地検の宇佐美忠章・検察事務官が「ガールスカウト日本連盟」の成人会員約40人に語りかけた。「裁判の内容をどうしたらわかりやすくできるか、日々、検討しています。裁判には推定無罪の原則があります。有罪だと思ってもらえなければ、被告人は無罪になるのです」

 若い人から高齢者まで幅広い層の女性がいるガールスカウトなら、企業などの説明会に参加しない人にも制度のことを伝えられる。参加した梅沢佳美さん(64)は「検察には怖いイメージがあったが、話がわかりやすかった」と笑顔を見せた。

 裁判員制度の広報活動は裁判所や弁護士会も行っているが、検察庁の“武器”は、組織力を生かした検事や事務官の大量動員。「草の根広報」と名付け、夜間や週末でも依頼があれば説明に赴く。昨年4月以降、説明会に参加した延べ100万人以上が職員と顔を合わせたことになる。

 説明会の対象も様々だ。甲府地検は今年6月、僧侶約60人が集まった場に出向き、山形地検は同月、約140戸しかない離島の飛島に職員3人を派遣した。岡山地検は9月、地元サッカーチームの選手たちに「代わりの選手がいなければ辞退できるケースもあるが、参加する場合も特別な法律の知識は必要ない」と積極参加を呼びかけた。

 最高検の担当者は「他省庁の人から所管する団体を紹介してもらったり、つてをたどったりして、少しでも多くの人に説明する場を作りたい」と話す。宇佐美事務官は「参加者が身近な刑事事件についてじっくり考える機会になれば、犯罪の起きにくい地域社会へとつながる」と期待している。

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 裁判所や弁護士会の広報活動も熱を帯びている。最高裁は11月10日から約1か月間、裁判員制度をPRするテレビCMを初めて放映。各地裁の裁判官たちは、裁判員候補者の辞退申し立てに対する判断の参考にするため、企業に足を運んで話を聞いている。日本弁護士連合会は11月、PRドラマ「裁判員になりました〜ニュースの向こう側〜」を制作した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081215-00000029-yom-soci