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2008年12月14日(日) 14時00分

サイゼリヤ為替対策で裏目 153億円もの損失を出したデリバティブ契約の中身MONEYzine

 ファミリーレストラン大手のサイゼリヤは10日、多額の評価損が見込まれていたBNPパリバ証券とのデリバティブ(金融派生商品)契約を解約したと発表した。これにより153億円の損失が確定した。損失は自己資金と金融機関からの借り入れでまかなうという。

 多額の損失が発生したことを受け、同社は09年8月期通期の業績が経常赤字に転落する見通しとなり、来年1月から正垣泰彦社長が1年間にわたり報酬を70%カットするなど経営陣を処分する事態に発展した。外食を営む同社がなぜ為替デリバティブに手を出していたのだろうか。

 同社は、オーストラリアからハンバーグなどの加工食品や牛肉などをレストランで使用するために輸入していた。日本企業が海外から大量の原材料を輸入する際には、収益が最終的に確定するまでに為替変動によって損失してしまう可能性がある。そのため同社はこの為替リスクを避けるためにデリバティブ取引を行っていたのだ。

 デリバティブ取引とは為替変動の動きをある程度推測した上で、将来における取引を先取りし、価格変動リスクを下げるものだ。つまり現在の豪ドル/円が「1豪ドル=100円」の場合に、将来120円まで円安に進むと思えば、現在の100円ではなく、豪ドル/円を「1豪ドル=120円」で先取りで取引できるのだ。そして実際に相場が円安に進めば損失を回避できる。ただし予測とは逆に円高に進めば損失が生じてしまう仕組みだ。

 ではサイゼリヤの場合はどうだったのだろうか。同社の契約では為替相場が一定水準より円安で推移すればメリットになるが、逆に円高に進むと損失が膨らんでしまうというものだった。過去5年間、豪ドル/円は円安に推移していたので、この判断は妥当な選択だったのかもしれない。しかし今年7月時点では100円近辺で推移していた豪ドル/円は8月に入ると世界金融危機の影響などで急激に円高に変動し、現在では60円程度。40%も円高に進んでしまい、同社は最終的に153億円の損失を出してしまった。

 これは同社や契約を結んでいたBNPパリバ証券の想定を超えた動きであったことに間違いないが、今回のように企業の想定通りに為替レートが動かなかった場合には、デリバティブ取引はリスク回避どころか、巨額の評価損を計上する可能性もある。

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