記事登録
2008年12月14日(日) 21時36分

トウカイテイオー、奇跡の復活劇産経新聞

 夢よ、もう一度。そうファンは願っていたに違いない。が、心の底から信じていたかどうか。

 1993年12月26日の第38回有馬記念。菊花賞馬のビワハヤヒデ、ジャパンカップを制したばかりのレガシーワールド、この年のダービーを制したウイニングチケットに続いてトウカイテイオーが4番人気に推されたのは、多分に、“同情票”が含まれていた。

 もちろん、実績は申し分ない。4歳(現3歳)時に、皐月(さつき)賞、日本ダービーのクラシック2冠に輝き、5歳(同4歳)ではジャパンカップを制した。しかし、レースはちょうど1年前の有馬記念以来。この時は11着に沈んだ。その後、骨折など故障に泣き、2カ月前に放牧先から栗東トレーニングセンターに戻ったばかり。過去、1年のブランクがありながら、いきなりGIレースを勝った馬はいない。

 ファンの夢を乗せたレース、奇跡は4コーナー過ぎに現実になった。大歓声の中、外からトウカイテイオーがぐいぐい伸びてくる。ゴールに向かって力強い走り。ビワハヤヒデを競り落とし、1着でゴール板を抜けた。

 「ゲートが開いた瞬間、走るんだ、という気迫が伝わってきた。直線では“がんばれ、がんばれ”と声をかけ続けた。いまはただ、“ありがとう”の言葉しかありません」

 鞍上の田原成貴は目を赤くして声を詰まらせた。

 「中央競馬の常識を覆す勝利です。体調が万全でなかっただけに、つい弱気になった自分が恥ずかしい。彼は自分で歴史をつくった」

 父、シンボリルドルフに続く父子での有馬制覇。これは史上初の快挙だった。

 2着に敗れたビワハヤヒデの岡部幸雄騎手は「まさか」と外から強襲してきたトイカイテイオーに仰天した。「こちらは絶好の手応え、それなのに、それ以上の勢いで何かが外から来るので、どの馬かと見たらテイオーだった。驚いちゃったよ」

 このレースの売り上げは過去最高の789億円(当時)。期せずして、スタンドからは「テイオー、テイオー」の大コール。馬券が的中した人も、そうでない人も、2分30秒のドラマに酔いしれた。

 ■トウカイテイオー

父シンボリルドルフ、母トウカイナチュラル

母の父ナイスダンサー

 成績=12戦9勝

 主戦騎手=安田隆行、岡部幸雄、田原成貴

 主な勝ち鞍=皐月賞、日本ダービー(1991年)、ジャパンカップ(92年)、有馬記念(93年)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081214-00000545-san-horse