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2008年12月14日(日) 09時59分

病院破産で津和野町民ら困惑中国新聞

 津和野共存病院などを運営するJA石西厚生連(島根県津和野町)の破産申請から一夜明けた13日、津和野町民には困惑や不安が広がった。「経営陣や町の責任が問われる」との怒りの声の一方で、「小さな町の医療を守らなければ」と話す人もおり、複雑な表情を見せた。

 「日原で唯一の病院。なくなってもらっては困る」と同厚生連が運営する日原診療所の近くに住む無職平野正一さん(61)。92歳の母親が老健施設のショートステイなどを利用しており、12日夜、「サービスはこれまで通り」と電話で連絡があったという。

 町内のケーブルテレビでは中島巌町長が破産申請について説明する番組が繰り返し流された。町内の主婦(48)は「新しくできた医療法人がうまく経営してくれればいいが…」と心配した。

 この日、職員向け説明会には82人が出席した。非公開で開かれ、説明会後、今後の対応などを破産管財人の錦織正二弁護士が記者会見して説明した。職員は解雇通告を受け、当面、臨時雇用として働くことを要請された。「どう身を振ればいいのか分からない」。勤続5年の介護士女性(45)は戸惑いの表情を見せる。

 石西厚生連労組(110人)の村上卓委員長は「賃金カットにも応じると労使協議中なのに破産はおかしい」と反発しながらも「患者に迷惑を掛けないために当面は退職しないように」と呼び掛ける。

 業者向け説明会に出席した町商工会長の椿康隆さん(60)は「町内の零細業者こそ優先的に救ってほしい」と求める。別の商店主は「腹は立つが、取引は続ける。わしもここで世話になるんじゃけ、つぶれてもらったら困る」と話す。

 町などが出資して8日、設立した医療法人橘井(きっせい)堂が4施設の運営を引き継ぐ予定。法人理事を務める松浦秀信副町長は18日にも職員募集を始めることを明らかにし「厚生連の職員が最優先」とする。病院運営について「極力、患者に影響がないようにしたい」とする一方、津和野共存病院は看護師数がぎりぎりであることから病棟縮小もありうるとした。

【写真説明】職員向け説明会の後、今後の対応などを説明する破産管財人の錦織弁護士

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200812140011.html