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2008年12月14日(日) 19時21分

「もらってしまえば後はいい」菊池寛賞贈呈式産経新聞

 第56回菊池寛賞(日本文学振興会主催)の贈呈式が12月5日、東京都内のホテルで行われた。今回受賞したのは、NHK大河ドラマ「篤姫」の原作でも知られる作家の宮尾登美子▽画家の安野光雅▽絵本作家・児童文学者のかこさとし▽将棋の羽生善治(棋聖、名人、王座、王将)−の各氏と、北九州市立松本清張記念館。心温まるエピソードあり、ちょっと危険なユーモアありと、個性的な受賞あいさつが続き、会場は大いに盛り上がった。

 《まずは日本文学振興会の上野徹理事長から、賞金100万円などを授与。選考顧問の半藤一利さんが「過去に勝るとも劣らない先生方ばかり。受賞が遅きに失したのではないか、というのが顧問3人の共通した意見でした」と祝辞を述べた後、各受賞者があいさつした》

 ■宮尾登美子さんの話

 昔、20歳のころだったか、将来作家になるという志を立てましてから、今年で60年目でございます。こんなに長い間、命をつないでこられたのは、ひとえに読者の方々のお励ましによるものと、改めて感謝の気持ちを表したいと思います。

 ここ2年くらいの間に心身ともに次々とトラブルが襲いかかり、これで私の作家生活も定年か、と落ち込んでおりました。その矢先の賞でうれしい。これは奮発して自ら定年延長して頑張りたい、と思っております。そこで手をたたかないでください(笑)。

 決意を新たに“しつつ”あるところでございます。今後は努力する姿をお目にとめていただき、なお一層励ましてください。

 ■安野光雅さんの話

 菊池寛賞というのはなかなか普通ではもらえない賞。身辺調査をやるのではと思ってます(笑)。でも、もらえたということは何もなかったということでしょうね(笑)。もらってしまえば後はいい。ですから、もらえるはずなんだ、と思っていてまだもらえていない人は、実はそういうことです(場内爆笑)。

 ■松本清張記念館館長、藤井康榮さんの話

 オープン時は全員が素人で、どう運営したらいいかもわかりませんでしたが、「勤勉で休みが大嫌い」という松本清張らしく、暮れの大掃除を除いてこれまで10年間、年中無休でやってきました。最後の最後まで向上心を失わない努力の人だったのです。がんばれば全国から来た清張ファンの方々に認めてもらえるだろうと思ってやってきました。

 今年はオープンから10周年で、来年は松本清張の生誕100年を迎えます。一段と仕事が忙しくなり、みな疲れ気味だったのですが、受賞を機に元気を取り戻しているところです。

 ■かこさとしさんの話

 みなさまご健筆なのに、私は10年前から緑内障をかかえておりまして…。それでも不思議なことに美人だけはよく見える(会場爆笑)。

 老人というよりも化石人類のたぐいに近づきつつあります。幼稚なことをのろのろ、ゆっくりとしてきました。子供は周りからいろいろなものを学んで、自分の糧にして成長していくということにようやく気づきました。そんな肝心なことに気づくのに50年もかけて、「ダメだなあ」とがっかりしておりました。

 このたびは過分な賞をいただいて勇気を与えてもらえたと思っております。余命いくばくもないですが(笑)、力を振り絞って恩返しをしたいと思います。

 ■羽生善治さんの話(竜王戦の対局日と重なったため欠席。ビデオでメッセージを寄せた)

 菊池寛先生は非常に将棋に理解が深かったという話も聞いています。歴史と伝統のある将棋界においても、このすばらしい賞をいただくのは大山康晴15世名人以来2人目だということで、大変光栄に思っています。

 私はまだ30代なので、これまでのことを評価していただいたというよりも、これからの期待を込めて賞をいただけたと思っています。今後も競技として、そして文化としての将棋の発展に微力ながら力を尽くしたいと思っております。

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