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2008年12月14日(日) 19時05分

「通過点に過ぎない」原告らが決意新た 薬害肝炎和解合意産経新聞

 「通過点にすぎない」。

「改めて強い憤りを感じた」。被告企業の日本製薬との基本合意を締結し、全面解決に大きな区切りを迎えた薬害肝炎訴訟。全国原告・弁護団のメンバーらからは14日、製薬企業への怒りの声が上がる一方、薬害根絶や肝炎対策実現に向け、決意を新たにする声が上がった。

 「深くおわび申し上げます」。東京都内の日本製薬本社で開かれた調印式。原告ら約70人が見守る中、合意書への署名に続き、日本製薬の三浦勉社長は何度も頭を下げた。正面をしっかり見据え、言葉を選ぶように丁寧に話した。

 各地の原告ら5人がそれぞれ意見陳述。10歳のときの心臓手術で使用した日本製薬の血液製剤で、C型肝炎に感染した東京原告団の細見悟司さん(41)は、「病気を治すための薬を作っている製薬会社が、逆に病気を引き起こし、患者を苦しめていることをしっかりと受けとめてほしい」と訴えた。最後に全国原告団の山口美智子代表が、肝炎対策基本法制定に関する請願書に署名してもらうよう三浦社長にお願いする場面もあった。

 調印式終了後の記者会見では、山口代表は、「今回の締結で、裁判上の闘いは終結することになります。しかし、訴訟が終わっても、薬害肝炎問題が終わったことにはならない」と強調。「(今日の締結は)薬害肝炎原告団の最終目標である薬害根絶と一般肝炎対策の実現の通過点にすぎない」と気持ちを新たにしていた。

 名古屋原告団の金田和子代表は、「事件から二十数年も経っており、もっと早く打つ手はなかったのか。なぜこんなに時間がかかったのか。問題を野放しにし、被害を放置していた製薬会社に改めて強い憤りを感じた」と語気を強めた。

 一方、汚染された血液製剤投与の証明ができない患者もおり、原告らが求める「全員一律救済」までの道のりは遠い。

 全国弁護団代表の鈴木利広弁護士は「被告企業が加害責任を受け入れて、謝罪をするところは一通り終わったが、被害救済や再発防止にどうつながっていくのかは、これからみていかなければならない」と強調した。

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