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2008年12月14日(日) 13時01分

裁判員制度:「選ばれたら困る」 対応に苦慮する零細企業 /新潟毎日新聞

 来年5月から始まる裁判員制度で、零細企業などは社員が裁判員に選ばれた時の対応に苦慮しそうだ。県内ではすでに従業員就業規則に裁判員特別休暇制度を盛り込んだ会社もあるが、ほとんどが大企業。零細企業や個人経営者はどう対応するのか。鍛冶(かじ)や研磨など金物のまちとして全国的に知られる三条、燕市で実情を聞いた。【川畑さおり】
 三条市の小林研磨工業では、20〜70代の職人約10人が働く。取り扱うのは医療器具や自動車部品など。小林鉄次社長(61)は「永遠に裁判員になるわけじゃないし、短期間なら仕事を調整して参加させたい」と話す。
 同社の就業規則には有給休暇制度がなく、裁判員特別休暇を設けるつもりもない。もし社員が裁判員に選ばれたら、その間は働いたものと見なすつもりという。例えば、日給1万円の社員が裁判員に選ばれ、日当が3000円支払われた場合、会社は残りの7000円を補てんする。
 しかし、職人として一人前になるには5年以上かかるといい、若手社員の扱いについて、小林社長は「まだ会社に給料分の貢献もできていない若手には、裁判より技術を磨く方に専念してほしいのが本音」と漏らす。
 県内に約1000ある研磨業者のうち、三条、燕市に約8割が集中する。同社のように従業員を10人以上雇っている事業所は10社程度で、その他は10人未満の零細企業だ。燕市で研磨業を営む広田清一さん(64)は「代わりの人がいないので断るつもり。景気が悪い中、せっかく来た仕事を断って二度と来なくなるのは困る」と話す。
 裁判員制度では「仕事が忙しい」という理由だけでは辞退が認められない。その人がいないと著しい損害が生じるおそれがあると裁判所が判断した場合に限り辞退が認められる。裁判員候補者として呼び出しを受け、正当な理由がないのに裁判所に出向かない場合は10万円以下の過料が科せられる可能性がある。小林社長は「自分が生き残るのに必死で、正直、裁判員について考えている職人はあまりいないと思う」と話した。

12月14日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081214-00000082-mailo-l15