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2008年12月13日(土) 21時55分

住宅ローン減税は魅力的だけど…雇用が気になり模様眺め産経新聞

 「過去最大規模」の住宅ローン減税が盛り込まれた与党税制改正大綱。決定翌日の13日、全国の住宅展示場やモデルルームには、「早く購入した方が減税効果が高い」という消費者心理も影響してか、前週よりも多くの来場者の姿があった。業界関係者は「(減税は)住宅需要が喚起され、景気を下支えする」と期待を膨らませたが、来場者からは「大幅減税は確かに魅力。だが、雇用が安定しなければ購入に踏み切れるわけがない」という模様眺めの声ばかり。景気浮揚の実効性を疑問視する指摘も少なくなかった。

 モデルハウス50棟が立ち並ぶ関西最大規模の住宅展示場「ABCハウジング千里住宅公園」(大阪府吹田市)。税制改正大綱の発表から一夜明けた13日、前週の土曜日より5割多い190組の来場者でにぎわった。担当者は「12月の土曜日にしては上出来。減税効果が出たのでは」と喜びを隠せなかった。

 「住宅ローン減税を説明します」

 大手住宅メーカーの旭化成ホームズはモデルハウスの前にこんな看板を出した。営業担当の鷦鷯(ささき)直哉さんは「これを見て、入ってくるお客さまが多い」と手応えを語る。「数年後には消費税も上がるし、今なら金利も安い」。業界からは、今回の大型減税を契機に市況回復を期待する声が高まっている。

 しかし、来場者は冷静、あるいは悲観的だった。妻(36)、長女(2)と3人で訪れた兵庫県西宮市の男性会社員(39)は「そろそろ家を持ちたい。減税は大きなチャンス」と語った一方で、「給料の伸びやリストラといった不安要素が多すぎる。雇用自体が安定しないと、購入に踏み切る人は増えないのでは」と予測した。

 奈良市の男性公務員(48)は「妻と2人で暮らす『終の住みか』がほしい」と考え、8月に一戸建て住宅の購入を申し込んだ。しかし、解約して購入費用に充てるつもりだった投資信託が金融危機で大幅に値を下げ、「今日は内装を見に来たけど、もう判断停止状態。減税に期待したいが…」とつぶやいた。

 期待感高まる業界の中で、「いや、当面期待はできない」と言い切ったのは、中堅メーカー「福山ホーム」の平野忠雄・営業部長。クリスマスの装飾で華やぐ場内を眺めながら「衣食足りて、住宅はその後。景気も大手メーカーの攻勢も厳しく、来年の契約は相当きつくなるだろう」と覚悟を語った。その上で、麻生太郎首相に対し、「本来なら、家を10年前に買った人に手厚い減税をすべきだ。子育てで一番しんどい世代が楽にならないと、消費が伸びるわけがない」と辛辣(しんらつ)に批判した。

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