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2008年12月13日(土) 01時59分

多少の幅も“相場”に近い結論 被害者参加の裁判員制度模擬裁判産経新聞

 被害者参加制度の導入にあたっては、「被害者の救いになる」と歓迎の声がある一方、来年5月に導入される裁判員制度で裁判員の判断が「厳罰を求める被害者の感情に引きずられかねない」との慎重な意見もあり、賛否両論だ。ただ、これまで各地で行われた被害者参加制度を取り入れた裁判員制度の模擬裁判では、被害者の感情に配慮しつつも過去の事例とのバランスを考えた判決が導き出されている。

 今年7月に東京地裁で行われた模擬裁判では、飲酒運転による死亡事故を起こし、危険運致死罪に問われた被告についての審理が行われた。被告は過去にも飲酒運転で人身事故を起こしている常習者という設定。検察側が懲役8年を求刑したのに対し、遺族側は「遺族が失ったものは大きい」と、より重い懲役10年を求めた。

 裁判員6人と裁判官3人による評議では意見が割れた。裁判員の1人は「刑が重ければ遺族の感情は和らぐ」と遺族が求めた懲役10年を支持。一方で別の裁判員は「遺族の訴えで、過去の事例に比べて量刑が(簡単に)変わるのはよくないのではないか」と疑問を投げかけた。

 評議は多数決となり、結論は検察官の求刑通りの懲役8年。ある弁護士は「相反する意見が出たことで、結果的にはバランスが取れた」とみる。

 被害者参加制度を取り入れた裁判員の模擬裁判は今年5〜10月に、22地裁・地裁支部で26回実施された。いずれも東京地裁の事件と同じ、飲酒運転による死亡事故が題材。検察側が懲役6〜12年を求刑、遺族側が求めたのは懲役9〜20年とかなり重い想定だった。

 これに対し、評議の結論は懲役4〜8年で、平均は懲役6年あまり。法曹関係者によると、「現在なら懲役5〜7年程度の判決になる事件」といい、多少の幅はあるものの、“相場”に近い結論が出ている。

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