記事登録
2008年12月13日(土) 14時56分

岩手・宮城内陸地震から半年…観光痛手、厳しい年の瀬読売新聞

 死者・行方不明23人を出した岩手・宮城内陸地震から14日で半年。大きな被害を受けた栗駒山周辺の観光施設が再開するのは来春以降になりそうで、ふもとの経済へも影響は広がる。不況も影を落とし、被災地は厳しい年の瀬を迎えている。

 「55歳を過ぎると正社員はダメと言われた」。宮城県栗原市の第3セクター「ゆめぐり」が運営する温泉施設の調理師だった蜂谷昌巳さん(56)は、3社に履歴書を送ったが、面接を受けられたのは1社だけだった。4施設を運営していた「ゆめぐり」は135人を一時解雇、再雇用は47人だけだ。妻のパート収入と月15万円の失業給付金が頼りの蜂谷さんは、車もバイクも売り払い、「もう、あきらめ気分」とうなだれる。

 地震で、年間約120万人の観光客を集める栗駒山周辺の宿泊施設15軒が、営業休止に追い込まれたままだ。岩手県一関、奥州市の市営スキー場は今季の営業を断念した。

 ふもとの栗原市の食材卸売業「岩ヶ崎魚市場」は、宿泊施設などと年間4000万円の取引があったが、売り上げは7割減。青果店主の高橋彪(たけし)さん(73)は、「買い控えも始まり、客単価は半分になった」と嘆く。

 被災地や周辺には、自動車部品などの工場が集まる。トヨタ系列の「関東自動車工業」は、岩手工場(岩手県金ヶ崎町)などの人員削減を発表。同社から受注する栗原市の業者は週1日、ラインを止める。岩手県北上市、一関市でも大手系列企業などが人員削減中で、自動車関連で50〜70%の受注減の電線加工業「大場製作所」(栗原市、従業員84人)の大場俊孝社長は「このまま受注が減れば、仕事をやめなければいけない」。

 従業員25人を抱える栗原市の運送業「丸栄商運」は、地震後、取引先の操業中止で受注が一時半減。原油高騰に続く不況の波で、長距離輸送などが2〜3割減。伊藤栄一社長は「どうなるか見当がつかない」と話す。

 栗原市財政課は「企業の業績悪化は、税収減、市民の購買意欲減退につながる。復興の過程でボディーブローのように響く」。栗原南部商工会の遠藤長(たける)・経営支援課長は「地震と不況のダブルパンチ」と心配する。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081213-00000030-yom-soci