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2008年12月13日(土) 11時34分

<浜岡原発>1、2号機廃炉へ 6号機を新設 中部電力検討毎日新聞

 中部電力が、長期運転停止中の浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)1、2号機(沸騰水型軽水炉、出力計138万キロワット)を廃炉にし、同原発に6号機の新設を検討していることが13日、分かった。6号機は18年度以降の運転開始を、1、2号機の廃止措置は35年ごろまでに完了する方向で調整している。07年の新潟県中越沖地震の後、国がより厳しい耐震性のチェックを求めているため、老朽化の進む1、2号機の運転再開は費用面から困難と判断した模様だ。商用原子炉の廃炉計画は日本原電の敦賀1号機(福井県敦賀市)=10年以降予定=などに次いで3例目となる。

 中部電力は1、2号機について耐震性を向上した後、11年度に運転再開する計画だった。しかし、07年の新潟県中越沖地震では柏崎刈羽原発で、設計基準として想定した450ガルの3.8倍の揺れが確認された。浜岡1、2号機の運転再開には大規模な耐震補強が必要となり、再開コストが大幅に増加する可能性が高まったため、廃炉の検討を始めた。廃止措置計画が国の認可を受ければ、10年程度かけて放射性物質を減少させた後、原子炉建屋を解体する。

 一方、中部電力の原発新設は05年稼働開始の浜岡原発5号機以来。中部電力の07年度の発電電力量に占める原子力発電の比率は18%と電力9社のうち2番目に低い。火力発電への依存度が高いため、発電電力量当たりの二酸化炭素排出量が多く、原油高で発電コストが増加しやすい収支構造にあった。

 中部電力は三重県南部で芦浜原発の建設を目指していたが、三重県は00年に計画を白紙撤回。関西電力、北陸電力と共同で進めていた石川県珠洲市の珠洲原発の建設計画も03年に凍結しており、新たな原発建設は重要な経営課題だった。

【中井正裕】

 【ことば】浜岡原発 中部電力が静岡県御前崎市(旧浜岡町)で運転しており、5基の原子炉からなる。中電が持つ唯一の原発で、総出力は488.4万キロワット、5基とも沸騰水型(5号機は改良型)。1号機(出力54万キロワット)は76年3月、2号機(同84万キロワット)は78年11月に運転を開始した。1号機は配管破断事故で01年から、2号機は定期点検で04年から停止中。

 ◇差し止め求め周辺住民が訴訟

 東海地震の想定震源域に立地する浜岡原発を巡っては、耐震安全性に問題があるとして、周辺住民が中部電力を相手に1〜4号機の運転差し止めを求め訴訟を起こしている。

 1審・静岡地裁は昨年10月、「中電の安全評価に問題はなく、設計上の安全余裕は十分に確保されている」として請求を棄却。住民側は控訴した。

 2審・東京高裁は今年9月の第1回口頭弁論で、運転停止中の1、2号機について和解による解決を双方に打診した。高裁には今後も運転停止を続けることを和解の条件にすることが念頭にあるとみられ、原告側は話し合いに応じる構えだが、中電は拒否していた。中電が1、2号機の廃炉の検討を始めたことは、訴訟の行方に大きな影響を与えることになる。

 ◇各社の判断で

 経済産業省資源エネルギー庁原子力立地・核燃料サイクル産業課の話 廃炉や新設の計画は聞いていない。ただ、電力供給の確保や地球温暖化防止の観点から、原子力発電所の立地や電力確保は重要だ。(原発による電力確保について)どのタイミングでどの手法でやるかは各社の判断だ。

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