記事登録
2008年12月13日(土) 11時05分

<殺人事件>時効制度見直しを 世田谷一家殺害の遺族ら会見毎日新聞

 00年12月に起きた東京都世田谷区の一家4人殺害事件の被害者、宮沢みきおさん(当時44歳)の父良行さん(80)と母節子さん(77)が13日、同区内で初めての記者会見を開き、殺人事件の時効の停止など制度の見直しを訴え、情報提供も呼びかけた。96年9月の葛飾区・上智大生殺害事件の遺族も同席し、時効見直しへの支援と理解を求めた。

 今月1日に刑事裁判への被害者参加制度が始まるなど、容疑者が逮捕された事件の遺族への支援は徐々に改善されつつあるが、未解決事件の遺族は支援策から、事実上取り残されている。未解決事件の遺族が集まり会見したのも例がない。

 この日集まったのは、良行さん夫婦と、上智大生殺害事件の被害者、小林順子さん(当時21歳)の父賢二さん(62)。別の関東地区2事件の遺族も賛同し、会見会場を訪れた。小林賢二さんは司会を務めた。

 会見の冒頭、良行さんは「私たちの命も残り少なくなった」と話し、用意した文書を読み上げた。宮沢さんの事件では、現場に犯人の血液や指紋が残されている。良行さんは「DNAで容疑者を特定できる。このようなケースでは容疑者にコードネームを付けて起訴し、時効を停止できないか」と訴えた。

 小林賢二さんも「私たちは風の音にもおびえ、捜査の進展も知らされないが、犯人への憤りは日増しに深まっている。遺族に時効はない」と、会見の締めのあいさつをした。

 小林さんが命日の9月9日、時効の撤廃を訴えた後、良行さんと連絡を取り会見することになった。今後、全国の未解決事件の賛同する遺族と連絡を取り合い、時効制度の見直しを訴えていくという。【神澤龍二】

 ◇世田谷一家殺害事件の遺族会見要旨

 「時効制度」について、国民の方々、特に政府・法曹界の方々に問題を提起し、血液のDNAなど犯人と結びつく資料が残っている場合には、犯人が生きている可能性がある期間までは、法の裁きを受けさせることができるようにと願っています。

 犯人のDNAに人格権を与え、逮捕状の請求、起訴へとつながらないものでしょうか。

 私たちと同じように未解決で苦悩しているほかのご遺族の方々の思いも察していただき、時効にどう向き合えばよいのか、広く社会の方々の知恵を授かりたいと存じます。

 ◇国は遺族の思いに傾聴を

 殺人事件の時効は15年(05年以降の発生は25年)。00年発生した世田谷一家殺害事件は、今後時効制度が撤廃されたとしても、「法の不遡及(そきゅう)の原則」から適用されることはなく、7年後には時効になる。

 それでも宮沢良行さんが時効の停止や廃止を訴えているのは、「たとえ時効を迎えても、息子一家の死を、制度の改善につなげ、形に残したい」という思いからだ。80歳を超え、「自分に残された時間は少ない」というあせりもある。

 未解決事件の遺族は、容疑者が検挙され、裁判に意識が移っていく解決事件の遺族とも異なる孤独感、無力感を味わっている。96年の上智大生殺害事件はあと3年で時効だ。今回遺族が集まったのは、行き場のない悲しみを共有したい思いのほか、遺族の処罰感情が時間の経過で薄れるとし、一方で犯人が逃走中に築いた利益を尊重しようという時効制度への違和感がある。

 国は、遺族たちの声に耳を傾けてもいいのではないか。【石丸整】

【関連ニュース】
公費懸賞金:愛知女高生殺害など3事件を新規指定 警察庁
刑事裁判被害者参加:光市の本村さん「権利実現の世代へ」
被害者参加制度:あすの会がシンポ 「裁判を癒しに」
オウム真理教:破産手続きが終結 被害者配当総額15億円
捜査資料:初公判前、被害者に開示…最高検通達

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081213-00000020-mai-soci