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2008年12月12日(金) 02時33分

<市販薬ネット販売>規制強化に波紋…ネット薬局猛反発毎日新聞

 来年6月の改正薬事法施行を前に、一般用医薬品(市販薬)のインターネット販売を巡る対立が深まっている。厚生労働省は安全確保のため、規制の方針を固めているが、11日、ネット薬局で作る「日本オンラインドラッグ協会」と楽天、ヤフーなどが舛添要一厚生労働相に反対の要望書を提出。その直後には、逆に大手薬局チェーン店などで作る「日本チェーンドラッグストア協会」などがネット販売禁止を訴えた。規制緩和を目指す内閣府の規制改革会議(議長、草刈隆郎・日本郵船会長)も加わり議論になっている。【清水健二】

 ◇チェーン店側は禁止訴え

 市販薬の副作用報告は年約300件。サリドマイドやスモンの薬害も市販薬で起きた。

 川崎市の小倉一行さん(37)は02年2月、旅行前に買ったかぜ薬を1日だけ飲んだ半月後、高熱や発疹(ほっしん)、目の充血の症状が表れ、スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群)と診断された。100万人に1〜6人という極めてまれにしか発症しない薬の副作用だが、起きると重症になり、死亡することもある。復職に1年半かかり、今も視力は0.02程度。「市販薬にこんな危険があるなんて誰も教えてくれなかった」と振り返る。

 薬事法が1960年に制定されてから半世紀近く。販売に関する規定は見直されてこなかった。条文上は薬剤師などがいる店舗のみで販売を認めているが、実際は薬剤師不在の薬店も多く、法の想定にないネットでの販売も急増した。

 販売体制を抜本改革したのが06年6月に成立した改正薬事法だ。ところが今年9月、ビタミン剤など副作用の危険が低い「3類」の薬以外のネット販売禁止を盛り込んだ同法施行規則案が公表されると、規制改革会議は猛反発した。主張の根幹は「ネット販売は以前から合法」。そもそも認める規定はない、とする厚労省の見解と真っ向から対立する。「楽天」の関聡司渉外室長は「ネットでも副作用の危険は伝えることができ、対面に比べ劣る点はない」と訴える。

 ネット薬局40店が加盟する日本オンラインドラッグ協会によると、通信販売も含めた市場規模は約260億円。3類以外の市販薬販売が禁じられると、かぜ薬や鎮痛剤のほか、店舗で買いにくい発毛剤や妊娠検査薬が売れなくなる。同協会の後藤玄利理事長は「チェーン店に押されネットに活路を見いだしている中小の薬局は死活問題」と代弁する。

 これに対し、日本薬剤師会や日本チェーンドラッグストア協会は「ネットでは対面販売と同等の安心・安全が確保できない」と規制賛成を表明している。

 ◇改正薬事法

 06年6月に成立。副作用の危険が高い順に市販薬を1〜3類に分け、1類の販売には薬剤師による説明義務を課す一方、リスクの低い2、3類は薬剤師以外でも登録販売者資格(新設)を持つ人がいれば、コンビニでも売れるようにした。ネット販売を直接禁じる条文はないが、「対面販売が原則」とされる。

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