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2008年12月12日(金) 07時21分

批判打開へ市長賭け 市岐商問題で辞職東京新聞

 立命館の中高一貫校誘致計画が、市長の進退にまで発展した。11日に辞職、再出馬を表明した岐阜市の細江茂光市長は「100年に一度のチャンス」と誘致実現を最重要の公約に掲げる。市長が、なぜ職をなげうつ「賭け」に出たのか。(市立岐阜商高・立命館問題取材班)

 「議会を説得できない限り前に進めない。民意は味方だと訴えるしか、方法は見つからない」。市長に近い市職員は、唐突にも思える辞職表明をそう解説する。

 市岐阜商を廃止するには条例改正案の可決が必要。だが、市議会はこの日、存続を求める請願を賛成多数で採択し、議会が立ちはだかった。

 立命館は、来年3月までに市議会の同意が得られなければ、ほかの進出先を探すとしており、事態を打開するには民意を問う道しかなかった。

 ただ、市長選を勝ち抜いても条例改正案の可決という市議会のハードルは依然、残ることになる。

 この問題で論戦が交わされた12月議会。細江市長は一般質問で誘致計画が持ち込まれた経過に疑問を呈した自民市議を市長室に呼び、抗議した。ほかにも複数の市議が開会中に「4人の経済人から市長に賛成するように頼まれた」「市長サイドから電話で賛成に回るように言われた」と話した。計画を思うように進められない市長のあせりとも映り、議会内で波紋を広げた。

 「教育立市」。細江市長はキーワードに掲げ、立命館誘致を推進してきた。地場の繊維産業は衰退し、柳ケ瀬もかつてのにぎわいが消えた。有名私学を誘致すれば、若い世帯が流入し企業も進出すると期待した。「新しい岐阜市に生まれ変わる試金石」「最初で最後のチャンス」。立命館誘致で岐阜浮上をとふるった市長の熱弁は、名古屋市を中心とした東海進出の足場を築きたいという立命館側の思惑とも一致した。

 市には高校の設置義務はなく、市長の持論は「市町村の役割は、小中学校を対象にした義務教育に特化すべきだ」。市岐阜商は近い将来、校舎の建て替えが必要になるが、費用は20億−30億円がかかる。立命館に市岐阜商を移管し校舎を建て替えてもらえば、その分は小中学校の耐震補強などに充てられると強調した。

 しかし、2倍近く志願倍率があり、定員割れをしていない市立高を廃止するのは全国的に例がなく、反発が相次いだ。在校生や卒業生らは「なぜ立命館のために学校がなくなるのか」と存続を求める署名活動を始め、約18万人分が集まった。

 新設計画の立命館岐阜高の年間授業料は80万円。市岐阜商の12万円の約7倍で、「不況で保護者の負担が重くなっている今、なぜ公立校を減らすのか」と高額な授業料を心配する指摘も市議から相次いだ。細江市長が立命館の要請に応じ、22億円相当の市岐阜商の土地、建物を無償で貸与、譲渡すると表明したことへの批判も大きかった。

  立命館岐阜高校の設置計画  市岐阜商を廃止し、同校の在校生は入学時のカリキュラムと学費を継続。老朽化した校舎は立命館が建て替える。男女共学の普通科で定員は3学年計960人。卒業生は立命館大、立命館アジア太平洋大(大分県)に進学できる。当初は2009年度開校を目指したが、難航したため10年度に延期した。後に中学も併設する。

(中日新聞)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008121290072135.html