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2008年12月12日(金) 06時02分

野良猫餌付けで近隣住民が加藤一二三将棋元名人相手に訴訟スポーツ報知

加藤9段の自宅前で「主人」の帰りを待つ野良猫

 将棋の元名人・加藤一二三(ひふみ)9段(68)が、自宅マンションの近隣住民から損害賠償を求める訴えを起こされていることが11日までに分かった。野良猫への餌付けによるふん尿被害が主な原因。15年前から餌をやり続けてきたという加藤さんは「動物愛護の気持ちで餌やりを続けてきた。反論は法廷で明らかにしたい」と話している。

 加藤9段の住む東京都三鷹市の集合住宅の駐車場には、11日も3匹の野良猫がいた。管理人の男性は「ホラ、餌をくださいって鳴いてますよ」とあきれ顔—。

 10代から「天才」とうたわれた名棋士が、住宅の管理組合と住民17人から餌やり禁止と慰謝料約800万円などを求める訴訟を東京地裁八王子支部に起こされた。

 管理人の話と訴状によると、加藤9段は約15年前から自宅玄関先の駐車場で野良猫にキャットフードを与え始めた。一時は15匹以上が集まることもあったという。餌やりの時間は主に深夜2時前後。ふん尿で庭の芝が枯れたり、駐車場の車が爪で傷つけられたりする被害が続いた。

 管理規約には、組合員に迷惑や不快感を抱かせる行為をしないよう定める条項がある。加藤さんには2002年頃から文書で餌やりの禁止の申し出をしてきたが、受け入れられなかった。管理人によると「ワシは別だ。支配されないんだ」などとすごまれるひと幕もあったという。

 その後、簡裁での調停も行われたが歩み寄りはなく、話し合いは物別れに。加藤さんは「動物愛護の気持ちで餌やりを続けてきたが、理解してもらえずに残念だ」との思いを語っている。16日に口頭弁論が行われるが、加藤さん側の金谷達成弁護士は「餌やりと被害の相関関係は立証できていません。地域猫の適正な管理として、加藤さんは里親探しもしていましたし『何とか理解してほしい』という思いを持っています」と方針を明かした。

 加藤9段は、1954年に14歳で4段(プロ)に昇格。史上最年少記録(現在でも継続中)を樹立し、初の中学生棋士となった。名人1、十段3、王位1、棋王2、王将1と計8期のタイトルに輝き、01年には史上3人目の通算1200勝を記録した。敬虔(けいけん)なクリスチャンとしても有名だが、一方で対局中に廊下で聖歌を歌うなどの数々の「伝説」も語り継がれている。

http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20081212-OHT1T00105.htm