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2008年12月12日(金) 10時25分

<たばこ増税>なぜ見送り?穴埋めは?(上) 党税調「介入」拒む 首相要請、根回し不足毎日新聞

 社会保障財源確保の「切り札」とみられていたたばこ税引き上げが11日、一転して見送られた。麻生太郎首相は最後まで指導力を発揮できず、次期衆院選をにらみ増税を嫌う与党内の反対論に押し切られた。09年度予算編成を巡って、麻生政権の混乱がまた繰り返された。【三沢耕平、赤間清広、清水憲司】

 「たばこ税はどうなるのか」。麻生首相は10日、自民党本部4階の総裁室で、党税制調査会の津島雄二会長、柳沢伯夫小委員長に切り出した。社会保障費の伸びを2200億円抑制する方針を見直すには、財源の確保が必須条件。首相は明言こそしなかったが、事実上の「たばこ増税」要請だった。

 柳沢氏は慎重論が強い税調の空気を伝え、「中川(昭一)財務・金融担当相からは『増税したい』と一度も聞いていませんよ」とやんわり拒否した。津島氏は「あとは首相の決断です」と歩み寄ったが、首相はそれ以上言わなかった。 

 自民党税調は伝統的に、税制に詳しい少数のベテラン議員による幹部会(インナー)が実権を握り、独立性が強い。党政務調査会の一機関だが、年末の税制改正論議は党三役も口出しするのが難しいとされ、税調出身でもない麻生首相の「介入」は異例だった。

 だが、反対論が勝った。国内の景気悪化で09年度税制改正論議が減税一色に染まる中、たばこ税の「狙い撃ち」に与党内では反対論が拡大。約2680万人の愛煙家の反発や、自民党の支持基盤とされる葉タバコ農家への打撃は必至で、「次期衆院選をにらむ党内の増税アレルギーは想像以上」(財務省幹部)だった。日本たばこ産業(JT)も反対に動いた。

 内閣支持率が急落し、首相の「威信」は低下するばかり。首相が異例の要請をした以上、官邸サイドは実現に全力を挙げなければならないところだが、「根回し役」が不在。厚生労働族でもある津島氏などは容認論に傾いてもいたが、首相が言いっ放しとあっては動きようがなかった。

 税調で実権を握る町村信孝前官房長官や伊吹文明前財務相らは財政規律を重視し、たばこ増税には消極的。政治的には、派閥領袖として政権を支える立場だが、積極的な根回しもないため、「他者の口出しを許さない」という党税調の論理に従った。

 財務、厚生労働両省の連携不足も目立った。「どちらがたばこ増税に責任を持つか」という縄張り意識が抜けず、中川財務相と舛添要一厚労相が決着に動く場面もなかった。

 たばこ増税見送りを受け、自民党の保利耕輔、公明党の山口那津男両政調会長は代替案を協議したが、結論は出ずじまい。11日夕、首相官邸で保利氏の報告を受けた首相は「うまくいかないなあ」とつぶやき、財源を引き続き検討するよう指示するしかなかった。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081212-00000013-maiall-pol