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2008年12月12日(金) 11時54分

漢字、社会の変容を反映 復活「凹む」中国でも使われる「萌え」産経新聞

 きょう12日は「漢字の日」。この1年をイメージする漢字を、京都・清水寺で貫主が大きな紙に揮毫(きごう)する「今年の漢字」(日本漢字能力検定協会主催)は年末の風物詩になっている。どんな一字になるのか注目されるところだが、漢字の受容史や面白さについて、早稲田大学の笹原宏之教授にきいた。(牛田久美)

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 「明治時代、矛盾をホコトンと読んだ議員がいたそうですよ。ホコトン議員という言葉も生まれました」

 今年は麻生太郎首相が漢字をたびたび読み誤って話題を集めたが、同じような人は昔からいたらしい。笹原教授によると、漢字が本格的に伝来したのは奈良時代以前にさかのぼる。

 「初めは中国の漢字をそのとおりに受け入れ、その中から日本語を書くのに必要な漢字が選ばれていった。使いやすいように、時には意味も変えた」

 それでも足りなければ新たに作った。日本オリジナルの漢字「国字」だ。たとえば「畑」は草木を焼く日本独自の農法が由来。「笹」「躾(しつけ)」「働」なども国字の仲間だ。

 明治期には日本から中国(清)へ、流れが逆になる。幕末から西洋の思想が日本へ入り、蘭学者や英学者が和訳していた。それを中国からの留学生が学んで持ち帰った。訳語の「経済」は大陸へ“逆輸出”された言葉のひとつだ。「経世済民の略語で、当時の学者たちが中国古典を読んでいたからこそ、できた言葉です」

 多くの漢字が作られては消えた。江戸の文書(もんじょ)などによくみられる「聢(しか)と」を使う人はほとんどいなくなった。一方、消えかけながら電子メールなどの普及で復活したのは「凹(へこ)む」。落ち込んだ気分を視覚的に伝える。

 「情報社会といえば、中国からきた『電脳』が意外に定着しましたね」

 「萌え」も、日本語と同じ独特の不思議な感情の意味で中国語へ入り込んでいるという。情報化時代が、かつてないスピードで漢字に新局面を開いている。「ただ、歴史を見れば、変化が止まっている時代はありません」

 「今年の漢字」は、時代を反映するといわれているが、漢字そのものも社会の変容を反映している。

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