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2008年12月11日(木) 15時09分

【総連事件調べ官尋問】被告の“美学”「責任から逃げない」産経新聞

 《在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)から中央本部の土地・建物と資金をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた元公安調査庁長官、緒方重威(しげたけ)被告(74)と元不動産会社社長、満井忠男被告(75)の第27回公判が11日午後1時15分、東京地裁104号法廷で開廷した。今回は満井被告の取り調べにあたったB検事の証人尋問と、満井被告の7回目の被告人質問が行われることになっている》

 《前回は、当時東京地検特捜部に所属し、緒方被告の取り調べを担当したA検事に対する証人尋問が行われた。A検事は、法廷で罪を否認している緒方被告が取り調べ段階では明確に罪を認めていたことを述べるとともに、両被告側が主張する、強引な取り調べ手法はなかったことを強調した》

 《また、緒方被告が初めて詐欺を認める調書に署名した、平成19年8月5日の翌日の調べの様子について、「『なぜこんなことになってしまったのですか』と聞いたら、緒方被告も『どうしてでしょう…』と言葉を詰まらせ、しばらくすると目に涙がたまって流れ落ち、『こんなつもりじゃない』と言いました」と詳述した》

 《続いて行われた満井被告の被告人質問で検察官は、満井被告が朝鮮総連から引き出した4億8400万円のうち、1億5000万円を共犯とされる河江浩司被告=分離公判で1審、2審有罪判決=に渡したことを「緒方被告には6月まで話していなかった」と主張していることについて質問。「緒方さんは、私から河江に金がわたっていることを知っていた」と記した満井被告のノートの内容を指摘し、食い違いについて説明を求めると、満井被告が答えに詰まる場面がみられた》

 《弁護人の背後のとびらから入ってきたB検事は、事件当時に東京地検特捜部に在籍していた。紺色のスーツにえんじ色のネクタイをしめており、がっちりとした体格だ。満井被告はグレーのスーツ姿。紺色のスーツ姿の緒方被告は、テーブルの上に書類を置いている》

 検察官「証人は現在、大阪地検の検事ですか」

 B検事「はい」

 検察官「平成19年6月24日に東京地検で満井被告を調べましたか」

 B検事「はい」

 検察官「在宅での調べのとき、不動産詐欺で逮捕されたとき、現金詐欺で逮捕されたとき、それぞれ黙秘権があることを告げましたか」

 B検事「はい」

 検察官「どうやって調書をつくりましたか」

 B検事「お話しされた供述を入力してプリントアウトし、読み聞かせ、内容を確認してサインしていただく流れです」

 検察官「6月24日の調べでは、満井被告は自らの責任については何と言っていましたか」

 B検事「開き直る態度ではなく、殊勝な感じでした。『A(出資候補者だったとされる航空ベンチャー会社社長)という人間と直接会わず、登記を進めたことは反省している。落ち度がある』と言っていました」

 検察官「出資については?」

 B検事「『確実に金を出すと思っていました』と」

 検察官「総連のだれと交渉を進めていたと言っていましたか」

 B検事「趙孝済(総連の財務担当常任委員)氏です」

 検察官「許宗萬(総連の責任副議長)氏だったと言っていたことは?」

 B検事「言っていたことはありません」

 《満井被告は、朝鮮総連側の交渉窓口は、検察側が指摘する趙氏ではなく、許氏だったと繰り返し主張したが、調書に盛り込まれなかったと主張。不適切な調べが行われた1例として述べていた》

 検察官「6月24日の調べでは、満井被告は詫び状のことについて何か言っていましたか」

 B検事「○○(空手団体総裁の実名)から『詫び状を書け』と言われたと説明していました。『すべて満井の責任。緒方先生はだまされた』と書けば、緒方被告が刑事責任の追及を免れることができる、と言われたということです」

 《○○とは、東京・六本木の通称「TSKビル」の地上げ案件に、満井被告とともに関わっていたとされる人物だ》

 検察官「それでどうしたんでしょうか」

 B検事「『詫び状を書くのは断った』と言っていました」

 検察官「なぜですか」

 B検事「2つの理由を挙げていました。1点は、『緒方先生が刑事責任追及を免れる保証があれば書いてもいいが、ないのでは書けない』ということでした。もう1点は、『2人だけでなく、案件には多数の関係者が関わっている。調べれば緒方先生の刑事責任も明らかになるだろう。虚偽の詫び状を書くと、のちのち足を引っ張る』という説明でした」

 検察官「どう思いましたか」

 B検事「緒方先生に刑事責任が一切ないなら、『ないから書けない』と言うはずなのに、あることを前提に『免れる保証がない』というからには、緒方先生の刑事責任も認めているに等しい、ととらえました」

 《鋭い分析だ。B検事はやや早口だが、緒方被告を「緒方先生」と呼ぶなど、一貫して理性的で丁寧な口調を維持している》

 検察官「何かさらに追及しましたか」

 B検事「『すべてあなたの責任なのか』と聞くと、『すべてが私の責任というわけではないです』と言っていました」

 検察官「緒方被告の刑事責任については何と?」

 B検事「答に窮して黙り込み、目に涙を浮かべていました」

 検察官「なぜですか」

 B検事「どうしたのか尋ねると、『まだ気持ちの整理がついていないが、自分の責任を押しつけて逃げる男ではないんです。それが満井なんです。気持ちの整理がつくまで待って下さい』と言っていました」

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