「ウィンドウズビスタ」が発売されて1年10か月。XPからの移行が遅々として進まない中、話題は既に次期OSである「ウィンドウズ7」のリリースへとシフトしてしまった感がある。
きっかけは、今年4月のビル・ゲイツ会長による「ウィンドウズ7はこの1年以内にリリースできる可能性がある」という発言だった。これを受け、「マイクロソフトはビスタが失敗作だったと見切りをつけ、ウィンドウズ7のリリースを前倒しして挽回を狙っている」という見方が広まってしまった。
その後マイクロソフトは、ビスタの発売から3年後の2010年のうちにリリースを目指すと発表したが、10月中旬には、早々と開発コード名だった「ウィンドウズ7」を正式名称にすると発表した。
通常、OSは2〜3年のサイクルでメジャーアップデートが行われるものだ。この流れから見ると、ビスタの発売から2年後の09年でも不思議はないのだが、ビスタが不評のためか、1年という短命で終わってしまった「ウィンドウズMe」とどうしても重なって見えてしまう。
逆にXPは、ビスタの開発がたびたび遅れたこともあって約5年も使用されてきたし、いまだにメーンOSとして使用するユーザーが多い。
ビスタは決して失敗作ではないと強気の発言を繰り返すマイクロソフトだが、現状を冷静に判断すれば、危機感は当然あるはずだ。
ウィンドウズ7は軽くて高速?そんな中、マイクロソフトは10月27日から米国で開催された「PDC(Professional Developers Conference)2008」において、ウィンドウズ7の公開デモを行い、参加の開発者にはプレベータ版が配布された。
公開された情報によると、カーネル(OSの中核部分)はビスタのものを継承するため、ウィンドウズ7でもハードやソフト、デバイスドライバーの互換性があることを明言。特に、起動や終了の高速化に注力しており、複数開いたウィンドウの管理を容易にする新しいタスクバーの導入、ネットワーク上のファイル共有の簡便化、指で触れることで操作を行えるタッチスクリーンインターフェースの導入など、一部の新機能が明らかにされた。
新しいOSには、こうしたユーザーの使い勝手を向上する機能はもちろん大切だが、忘れてならないのは、OSが要求するハードウエアのスペックだ。ビスタが受け入れられなかった大きな要因の一つに、要求するハードウエアのスペックが高すぎたこともあると考えられている。
このあたりの詳細はまだ明らかにされていないが、09年初頭には一般ユーザーに向けたベータ版の配布が予定されているので、その時点でおおよその状況が見えてくるだろう。
真にユーザーが求めていることを実現するのであれば、リリース時期などはどうでもいい。ユーザーの意向をないがしろにすれば、ビスタの二の舞いになることは明白だ。ウィンドウズ7が、ビスタへの移行をためらっているユーザーも納得するような、魅力的なOSになることを期待したい。(テクニカルライター・小野均/2008年11月22日発売「YOMIURI PC」2009年1月号から)