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2008年12月11日(木) 20時12分

【Re:社会部】“パラオの父”からの遺言産経新聞

 太平洋の島国パラオで旧日本兵の遺骨収集や慰霊活動に尽力し、日本人から“パラオの父”と慕われた日系2世、ショージ・シゲオ・テオンさんが10月下旬、88歳で亡くなりました。昨年、パラオに取材に行き、シゲオさん宅に泊めてもらったことを思いだします。

 パラオは戦前に日本の植民地統治を受け、現在も日系人が1000人ほど暮らしています。シゲオさんは父親が日本人。日常的に和食を食べ、日本の衛星放送のニュースを欠かさず見ていました。2階の自室の色あせた張り紙は「尽くすべきことに全力を傾けていれば他人の思惑は気にならない」。日本人より日本人らしい老人でした。

 シゲオさんから9月下旬、1通の日本語の手紙をいただきました。「毎日が暑中で汗だくです」という南の島ならではの時候のあいさつから始まり、日本の年金問題について書かれていました。

 《年金は個人の責任により納められるものであり、年金は国により管理される義務があると思います。年金問題とは誰の責任であるのか。…良い政治であるためには、政治家のための政治であってはならないと私は思います》

 手紙は「パラオから、日本国の平和を祈りつつ」と結ばれていました。父の祖国から来た新聞記者に、シゲオさんが伝えたかったことは何だったのか。“パラオの父”の訃報(ふほう)に接して以来、考え続けています。(徳)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081211-00000605-san-soci