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2008年12月11日(木) 23時33分

中川元幹事長の孤立化画策? 勉強会に町村派“包囲網”産経新聞

 反麻生勢力のリーダー的な存在である自民党の中川秀直元幹事長が11日、新たな議員連盟「生活安心保障勉強会」を旗揚げした。麻生太郎首相と距離を置く小池百合子元防衛相や渡辺喜美元行革担当相らがずらりと並んだが、首相に近い安倍晋三元首相や菅義偉選対副委員長らも出席し、「反麻生」的な言動に目を光らせる奇妙な展開に…。町村派では「中川包囲網」がジワジワ進んでおり、会合は逆に中川氏の孤立化を浮き立たせる結果となった。(石橋文登、加納宏幸)

 「一部の早とちり報道でこの会合が政局グループと伝えられたが、まったく純粋な勉強会なのでご安心いただきたい」

 党本部で開かれた準備会合には57人が出席した。会長に就任した中川氏は冒頭にマイクを握ったが、威勢のいい「中川節」は不発に終わった。

 横に座った安倍氏は「いま政府与党は厳しい状況にある。ここで一致結束して麻生政権を支えていきたい」とあいさつ。その後も安倍、菅両氏はにらみを利かせ、出席者の発言は純粋な政策論ばかりで過激な言動は影を潜めた。

 議連の活動目標は「安心基盤口座」の導入だ。社会保障制度や税制を「個人勘定」に統合し、安倍政権が導入を決めた「社会保障カード」を発展させるという構想だ。民主党も「年金手帳」導入を主張しており、与野党の接点を探りたいとの思惑もある。

 だが、この議連発足が浮上したのは、自民党内で首相批判が吹き荒れた11月下旬。「中川氏が反麻生でいよいよ決起する」とのうわさは一気に広がった。

 「議連に反麻生勢力が結集したら町村派が分断しかねない」。そう思った安倍氏と町村信孝元官房副長官は先手を打った。

 安倍氏は21日の衆院本会議で森喜朗元首相に「このままでは町村派が反主流とみられてしまう」と町村派幹部会の招集を求めた。25日昼の幹部会では、町村氏が「速やかな政策実現を求める有志議員の会」を痛烈に批判し、安倍、森氏も合いの手を打った。暗に黒幕として中川氏を指弾したのは明白であり、中川氏は「おれはあの議連とは関係ない!」と釈明に追われた。

 安倍、町村、森の3氏が共闘態勢をとったことで、中川氏は窮地に追い込まれた。このまま反麻生で突っ走れば、町村派を追われかねないからだ。

 中川氏は5日の議連発足を11日に延期。安倍、菅両氏らに自ら電話し、議連への加入を求めた。反主流色を薄めようと考えたようだが、安倍氏らはこれを逆手に取り議連の骨抜きに動いた。裏では森氏が町村派若手を「麻生さんが大変なときにバカな行動をするな! 中川を総裁にする気か!」と電話で恫喝(どうかつ)した。

 この企ては奏功し、議連は純粋な勉強会と化した。議連終了後、安倍氏は勝ち誇ったように語った。「政局がらみの議連では全くない。中川さんが参加しているから、そういううわさになってしまうのでしょうが、そういう思惑で参加した人はいません…」。首相−幹事長と二人三脚で政権を運営した友情関係はもはやかけらも見えなかった。

 一方、中川氏は11日夕、都内のホテルで開いた自らのセミナーでこう語った。

 「麻生内閣は支持率にとらわれず思い切った政策を打ち出すべきだ。いまは倒閣の時ではない。麻生首相に最も距離のある私がいうのだから間違いない」

 事実上の休眠宣言といえる。ただ、派閥レベルでの締め付けに若手には不満が渦巻いており、次なる政変の潮目が近づけば、中川氏が改革の旗手として再び動き出すことは間違いない。

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