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2008年12月11日(木) 23時26分

<6カ国協議>北朝鮮が揺さぶり 米次期政権を見据え毎日新聞

 【北京・西岡省二】北京で開かれていた6カ国協議で、北朝鮮はオバマ米次期政権の来年1月20日発足を視野に入れ、核検証方法の文書化を要求する各国を揺さぶった。ただ「核施設からのサンプル(試料)採取」の明記を求める日米韓の結束は予想以上に固く、思惑通り経済・エネルギー支援獲得の道を開くことはできなかった。

 「残っているのは核施設の無能力化と経済補償(経済・エネルギー支援)問題だ」。北朝鮮首席代表の金桂冠(キムゲグァン)外務次官はシンガポールでの米朝協議(4〜5日)後、繰り返し強調した。協議2日目の9日、中国が核検証方法の文書化草案を提示した際、金次官は強い不快感を示した。「10月の平壌での合意がすべてだ。いま明確なのは、そこに書かれたものだけだ」。口頭でコメントを出したきり、釣魚台迎賓館の控え室にこもった。

 北朝鮮は無能力化と支援の完了期限の設定を目指し、検証問題を今回の議題から切り離しを図った。

 「7月合意にある施設訪問、書類検討、科学者面談だけでも科学的手法といえる」

 「(他国からの)信用のない現時点でサンプルを採取するのは、自国の核能力を知らせるものだ」

 さらに、北朝鮮は「主権国家としての立場から、安全保障上の次元からも受け入れられない」と強調し、試料採取を受け入れられるのは、米国などとの関係改善後との解釈まで示した。

 だが、厳格な検証を求める日米韓も頑なだった。文書化と支援の包括的履行を強く要求したうえ「安易に妥協するなら休会すべきだ」(日本側協議関係者)との強硬姿勢を貫いた。北朝鮮側も根負け状態になり、11日午前になって「もう少し議論してみたい」と柔軟姿勢に転じざるを得なくなった。

 協議では北朝鮮と他国の溝は埋まらず、文書化は先送りされた。「米首席代表のヒル国務次官補はブッシュ現政権下での協議再開に向けてがんばるだろうが、難しいだろう」。協議関係者は前途をこう展望した。

■6カ国協議 議長声明の骨子■

 一、朝鮮半島非核化を目指した共同声明(05年9月)を再確認し、積極的努力を表明。核施設検証で国際原子力機関(IAEA)の支援と諮問を歓迎。

 一、寧辺核施設の無能力化と重油100万トン相当のエネルギー支援の並行履行、国際社会の参加を歓迎。

 一、日朝間、米朝間の懸案解決と関係正常化への努力を促進。

 一、6カ国協議の早期再開を確認。

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