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2008年12月11日(木) 22時30分

<6カ国協議>米、譲歩重ねたツケ 核解決の有効性に疑問も毎日新聞

 【ワシントン草野和彦】ブッシュ政権下で最後となる見通しの6カ国協議開催に際し、米国は「検証枠組みの合意文書化以外に目的はない」(ライス国務長官)との姿勢で臨んだ。しかし、オバマ次期政権に課題が引き継がれることになっただけでなく、北朝鮮核問題を解決する場としての6カ国協議の有効性が問われる事態にもなった。外交成果を急ぐ余り、米朝協議を軸に北朝鮮に譲歩を重ねてきたブッシュ政権の交渉戦術が、最後になって綻(ほころ)びを露呈したといえそうだ。

 検証枠組みのうち、サンプル(試料)採取の合意取り付けは、米国には絶対譲れない一線だった。「公式文書でも付属文書でも何でもいい。公になって法的拘束力があれば」」。協議関係者は事前にこう語り、体裁より実利を求めていた。

 北朝鮮はプルトニウム生産量を38・5キロと申告。その真偽を確認するために欠かせない核施設などでの試料採取ができなければ「ただの視察」(同)になってしまうからだ。

 こうした指摘は、譲歩を繰り返したブッシュ政権の交渉姿勢への批判でもある。北朝鮮に「核計画の完全かつ正確な申告」を求めるはずが、高濃縮ウラン計画や、シリアへの核協力は非公開文書扱いになった。「厳格な検証」を目指した10月の米朝会談で、試料採取を口頭での合意にとどめたことが、今回の協議での交渉を困難にしたのは明らかだ。

 6カ国協議は、ブッシュ政権1期目の03年に発足。同政権は、協議の枠組みが「実績」としてオバマ次期政権に継承されることを望んでいる。米国家安全保障会議(NSC)のワイルダー・アジア上級部長も協議前「他の参加国が、次期米政権の北朝鮮対策に関心があるのは理解できる」として、まずは「次期政権が価値を見いだす交渉の場」にすることが大切と強調した。

 そのためには今回、第2段階措置(核施設の無能力化と核計画の申告)完了に道筋を付け、進展を印象付けることが必要だった。

 「(合意文書に)試料採取が盛り込まれないと、我々の負け」。協議直前、改めて北朝鮮側と会談した米首席代表のヒル国務次官補はこう語った。それが現実のものになった。

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