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2008年12月11日(木) 22時03分

toto売り上げ最高、黒字に道筋 課題は長期的視野産経新聞

 サッカーくじ(toto=トト)の販売が好調を維持している。最高当せん金6億円の「ビッグ」人気を背景に、今年度の売り上げはすでに800億円に迫り、過去最高を150億円以上更新。借入金の返済も終え、来年度のスポーツ振興に使われる助成金は過去最高の65億円を確保した。「黒字経営」に道筋がついたことで、次の課題となるのは助成金の安定供給。東京が招致を目指す2016年五輪に向け、早急な取り組みが求められている。

 トトは販売が始まった01年度、642億円以上を売り上げを記録したが、その後は年を追うごとに低迷。06年度には134億円まで落ち込み、繰越欠損金は264億円まで拡大。翌年度の助成金が8000万円を割り込む危機的状況に、閣僚からは即時廃止を求める声も上がっていた。

 だが試合予想を必要としないビッグの導入でサッカーファン以外の関心も高まり、07年度の売り上げは637億円にV字回復。今年度も堅調に推移し、12月には797億円を突破した。来季のJリーグが開幕する年度末の3月には800億円突破も確実視される。

 売り上げの8割超を占めるのはビッグをはじめとする「宝くじ系」。運営する日本スポーツ振興センターが06年、それまで金融機関に委託していた販売などの業務を直営方式に切り替えたことで、意思決定が迅速に進むようになり、発売決定からわずか2カ月での商品化にこぎつけた。

 コンビニエンスストアや、従来の宝くじにはなかったインターネットでの販売も購入層を拡大。金融機関からの長期借入金も8年前倒しで返済を終えた。収益を「借金返済」に回す必要がなくなったことで、来年度も今年度並みの売り上げを確保すれば、10年度の助成金が100億円の大台に乗る可能性もある。

 トトの好調ぶりは選手強化費の捻出(ねんしゅつ)に苦慮する日本オリンピック委員会(JOC)にとっても朗報だ。北京五輪で獲得メダルを大幅に伸ばした英国が国営宝くじの収益を強化費に充てたように、16年五輪の東京開催を見越した選手強化・育成の大きな後押しとなる。

 ただ、これまでは年ごとに支給額の変動が大きく、助成金を基盤に置いた長期の育成計画立案が難しかったのも事実。11月の助成審査委員会では、JOC理事の上村春樹委員が「ばらつきがあるとやりづらくてしようがないし、厄介。4年サイクルなど、長期的視野に立った配分を」と注文をつける場面もあった。振興センターの石川良二推進役は「一定額を留意する方針は固まった」として、今後は年度分の助成金を全額使い切らずに、一部を積み立てて安定財源の確保に努める意向だ。

 トトが「サッカーくじ」の名称とはややかけ離れてきた側面は否めないが、日本のスポーツ振興に今後大きく貢献していく方向性は整いつつある。(奥村信哉)

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