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2008年12月11日(木) 22時00分

限界露呈した6カ国協議 米政権主導…北朝鮮に惨敗産経新聞

 北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議は、検証についての文書化に失敗し事実上の決裂に終わったが、結果は事前に予想されていたものだった。試料採取を拒否する北朝鮮の主張はこの間、繰り返し表明されてきたからだ。それでも北朝鮮が協議に応じたのは、「6カ国」枠組み継続への「誠意」をアピールし、経済・エネルギー支援獲得の「行動対行動」を要求するためだった。

 5年4カ月にわたった6カ国協議は北朝鮮の核実験(2006年10月)以降、米朝協議を追認する場に形骸(けいがい)化した。しかし、拉致問題を抱える日本や南北関係を維持したい韓国など、各国の思惑がからみ継続してきた感が強い。今回はそんな協議の限界を再確認するかたちで終わることとなった。

 一方で北朝鮮は、「6カ国」のうま味を十分手に入れた。核活動停止と寧辺の核施設の申告だけで米国から「テロ支援国家指定解除」を引き出し、核実験前には「適当な時期に軽水炉提供問題を議論する」と明記した「共同声明」(05年9月19日)を公約化し、実験後には米朝国交正常化交渉などの作業部会を決めた「2・13合意」(07年)などに関係国の署名を取り付けた。オバマ米次期政権との対米協議で、北朝鮮はこれら合意済みの「国際公約」の実現を迫るだろう。

 北朝鮮は「われわれは核拡散防止条約(NPT)を脱退し国際原子力機関(IAEA)の傘下にない特殊な立場」と主張し、核実験を正当化。「核保有国」としての国際的認知を求めている。また、6カ国協議では核計画検証、未申告のウランの濃縮計画、すでに保有している核物質と核兵器の処理など核戦略カードの保持にすべて成功した。ブッシュ政権主導の6カ国協議は、対北惨敗のまま幕を下ろすことが濃厚になった。(久保田るり子)

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