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2008年12月11日(木) 21時45分

日本の抗議に説明なし 示威行為? 中国船の尖閣諸島領海侵犯 産経新聞

 わが国固有の領土である尖閣諸島の領海内に中国の海洋調査船2隻が出没した事件は、関係修復が進んでいる日中関係に暗い影を落とした。中国側の「示威行為」との見方が強く、麻生太郎首相は13日の日中首脳会談の際に抗議する方針を固めているが、度重なる中国の不法行為に「戦略的互恵関係」の難しさを露呈したといえる。(田中靖人)

 事件は8日に起きた。海上保安庁の巡視船「くにがみ」が午前8時10分、尖閣諸島・魚釣島の南東約6キロの領海内に中国国家海洋局の調査船「海監46号」「海監51号」が航行しているのを発見。「くにがみ」が領海侵入の目的を無線で確認したところ「尖閣諸島は中国の領土だ」と返答し停止、進行を繰り返しながら魚釣島を一周した後、9時間後に領海外に消えた。

 日中間では平成13年2月から東シナ海で海洋調査を行う場合、2カ月以上前に相手側に通報する事前通報する取り決めを結んでいるが、事前通報はなかった。海洋調査に必要な機材の投下などをした形跡もなかったという。

 海上保安庁によると、中国側は今年に入り、日本の領海、排他的経済水域(EEZ)内で5回の調査を行っているが、いずれも事前に通報があったという。

 首相は8日夜、「明らかな領海侵犯であり甚だ遺憾だ」と表明。外交ルートを通じて抗議したが、中国政府側から明確な説明はないという。中国外務省の劉建超報道局長は9日の記者会見で、記者に「挑発行動ではないか」と問われ、「中国が管轄する海域で正常な航行をすることが、なぜ挑発なのか」と反論した。

 政府筋によると、国家海洋局は中国海軍から分離した組織で今も海軍の影響力が強い。東シナ海を中心に中国海軍の活動は年々活発化しており、「領海侵犯は尖閣諸島を中国領だと主張するための示威行為だ」(政府高官)との見方が強い。政府中枢や外務省は調査船の動きを事前に知らされていなかったとみられ、国家海洋局独自の動きである可能性が高い。

 一方、台湾の馬英九政権は、尖閣諸島の領有権問題を棚上げし、周辺海域の日台共同開発を提案している。このため政府内には「中国には尖閣諸島をめぐる日中の領土問題を再燃させることで、この問題に台湾を巻き込みたいとの狙いがあるのではないか」(高官)との見方がある。

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