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2008年12月10日(水) 21時09分

<裁判員制度>目撃者なし公妨罪例に模擬審理 東京地裁毎日新聞

 強盗傷害と公務執行妨害の罪に問われた被告と、被害者の警察官の言い分が食い違う事件を想定した模擬裁判が5〜10日、東京地裁で行われた。目撃者がいないことから、どちらの主張を信用するかの見極めが焦点となったが、裁判員役の市民からは「足して2で割りたいくらい判断が難しい」との声も聞かれた。

 題材になったのは、無職の男(61)が駅前で酔って寝込んでいた男性のポケットから財布を盗み、職務質問した警察官に暴行を加えたという架空の事件。被告側は「財布は男性のそばで拾った。声をかけてきた人が警官とは分からず、先に警官側から殴ってきた」と主張した。

 警官は被告がポケットから財布を抜いた場面を見ておらず、もみ合った際の目撃者もいないため、法廷での両者の証言のどちらを信用できるかが評議の焦点になった。評議の結果▽警官の証言は自然で、けがの状況とも符合する▽寝込んでいた男性のズボンや財布の特徴から自然に落ちるとは考えにくい▽被告が警官と気付かなかったとの証言は不自然−−などの理由から有罪と認定し、懲役6年を言い渡した。

 裁判員役で参加した東京都世田谷区の無職、田村均さん(68)は「(両方の言い分を)足して2で割って、中間を取りたい気持ちになった」と話した。港区の女性会社員(32)も「誰かが見たという事実がないと、最終的な答えを導くのが大変難しいと感じた」と述べた。【伊藤一郎】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081210-00000113-mai-soci