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2008年12月10日(水) 00時00分

「人生狂わされた」読売新聞


日本綜合地所との団交会場に向かう学生ら(9日、東京・中央区で)=岩波友紀撮影
「内定取り消し」学生団交

 雇用情勢の悪化が深刻化する中、内定の取り消しや派遣切りを巡って、9日、学生や派遣労働者たちが抗議の声をあげた。高卒予定者の就職戦線でも、求人票を撤回する企業が急増しており、世代を超えて働く場が次々と失われている現状が浮き彫りになった。

「迷惑料」ではすまない

 先月17日、来春採用予定の大学生53人全員の内定の取り消しを通告した東証1部上場のマンション分譲大手「日本綜合地所」(東京都港区)。このうち都内の大学4年の男子学生(23)は同じ立場の2人とともに、個人で入ることができる労働組合に加入したうえで、9日、同社が用意した社外の貸会議室で総務部長らと団体交渉に臨んだ。

 広さ8畳ほどの部屋でテーブルを挟んで向き合うと、総務部長は「迷惑をおかけしました」と頭を下げたが、10月の内定式で「不動産業界は不況だが、うちは大丈夫」と話していた社長の姿はない。「なぜ、社長が来て謝罪しないのか」。声を荒らげて詰め寄っても、総務部長は「交渉にあたるのは私たちですから」と理由をはっきり語らなかった。

 会社側は、学生たちに提示していた1人42万円の「迷惑料」を今回、100万円に増額すると説明した。それでも「人生を狂わされた」という悔しさは募るばかり。「1年分の学費にもならない」という反論にも、会社側は「できる範囲のことはしている」「生活の面倒までは見ることができない」と語るだけだった。

 男子学生は、他に6社からもらった内定を断っており、会社の指示で、自費で宅地建物取引主任者の資格取得の勉強も始めていた。内定取り消しの連絡を受けてから、来春の就職を目指し、インターネットを見て資料請求をしているが、面接までこぎ着けた会社はゼロ。男子学生は交渉後、「本当はこんなことをしている余裕はないけれども、泣き寝入りだけはしたくない」と悲しそうに話した。

求人取り消し 高校生直撃

 就職の厳しさは高校生にも広がっている。

 企業などが高校に出した求人票を撤回する「求人取り消し」が昨年の61校から142校に倍増していることが、日本高等学校教職員組合(日高教)などの調査でわかった。調査は今年10月末時点の状況について、33道府県の計430校(公立390校、私立40校)の回答をまとめた。

 1件以上の求人取り消しがあったのは142校で、前年同期の2・3倍。「求人票が10月からほとんどゼロになった」(茨城県の高校)、「1次試験で不合格になっても次の応募先がない」(岡山県の高校)など厳しい状況を嘆く声が寄せられた。

 日高教の佐古田博副委員長は、内定の取り消しについても「これから増加することが予想される」と危機感を募らせている。

http://www.yomiuri.co.jp/national/kishimu/kishimu081210.htm