福山市三之丸町で2005年12月に起きた放火殺人事件で、殺人と現住建造物等放火、詐欺などの罪に問われた同市山野町、無職辻富美恵被告(49)の初公判が9日、広島地裁であった。辻被告はすべての起訴事実を否認。弁護側は無罪を主張した。
検察側の冒頭陳述によると、辻被告は内縁関係の夫がいながら、同市山手町の会社員辻祥一さん=当時(50)=と結婚。自ら経営していた飲食店に放火して祥一さんを焼死させ、不慮の火災での死亡と偽り、遺族厚生年金約105万円をだまし取るなどしたという。
借金があり祥一さん名義のクレジットカードで多額の借り入れをしている—などの状況証拠を挙げて犯人性を指摘。自己を受取人とする最高1億円の生命保険契約を複数申し込むなどの事前準備があった、とした。
弁護側は冒頭陳述で、「被害者とは真剣に交際をしており、借金も返済が逼迫(ひっぱく)する状況にはなかった。火事は、石油ストーブが壊れかかっていたため失火の可能性もある」と主張。「直接証拠はない」と争う姿勢を示した。