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2008年12月10日(水) 22時49分

どうなる「たばこ税」 またも自民党大揺れ産経新聞

 与党税制大綱の決定を目前に控え、たばこ税の増税をめぐり、政府・自民党は10日深夜まで大揺れとなった。もっとも増税にこだわったのは麻生太郎首相だ。経済危機により大幅税収減が見込まれるだけに年々増大する社会保障費を補いたいと考えたからだが、葉タバコ生産農家や小売業者をバックにした議員は軽々には譲らない。加えてたばこ税論議は「愛煙家VS嫌煙家」の対立をあおることになりかねず、またも首相のリーダーシップが問われることになった。(今堀守通、加納宏幸)

 10日昼の党本部の自民党総裁室。首相は津島雄二党税調会長らとひざ詰めで会談し、「社会保障費の2200億円は頭が痛い」とたばこ税増税を求めたが、税調幹部は冷ややかだった。

 津島氏はもともとたばこ税の増税に賛成だったが、税調小委員長の柳沢伯夫元厚労相らが強硬に反対。津島氏は10日の津島派運営幹事会で「上げたくても上げられないんですよ」とこぼした。

 2200億円とは、小泉内閣が平成18年に閣議決定した「骨太の方針2006」で社会保障費の伸びを毎年2200億円抑制する方針を指す。首相は外相として閣議決定で署名しており、既存の財源や国債発行で穴埋めすれば「財政再建を放棄した」との非難は免れない。

 しかし、医師不足などが次々にクローズアップされていることもあり、「これ以上の抑制は限界だ」との声は与党内に根強い。そこで、首相はたばこ税増税で2200億円の穴埋めを思いついたわけだ。たばこ税ならば「健康増進」という大義も立つ。反主流の中川秀直元幹事長が6月に超党派の「たばこと健康を考える議連」を発足させ、野党とともにたばこの大幅増税を主張してきたことも「追い風」と考えたようだ。

 財務省の試算では、たばこ1本に1円の増税で500〜600億円の税収増が見込める。3〜4円の増税で社会保障費の穴埋めは可能だが、首相は周囲に「2個パック1000円でいいじゃないか」と漏らしており、「1箱500円」も視野に入れているとされる。

 首相は2日午後、首相官邸で与謝野馨経済財政担当相や自民党の保利耕輔政調会長らと来年度予算の基本方針を検討した際も「たばこ税をやればいいじゃないか。財務省も『それでやりましょう』と言ってるんだから」と強いこだわりを見せた。

 だが、経済危機により6兆円の税収減が見込まれ、来年度予算案で赤字国債大量発行は避けられない。党税調が難色を示すのも「たばこ税は最後の最後に帳尻を合わせる手段だ。どうせ赤字国債を大量発行するのに『まずたばこ税ありき』はおかしい」(幹部)との思いが強いからだ。

 公明党が次期衆院選をにらみ「大衆増税になる」と難色を示したことや、葉タバコ生産農家や小売業者が「増税反対」と陳情を繰り広げたことも増税ムードにブレーキをかけた。

 しかも愛煙家の多い自民党では心理的ブレーキも強い。ヘビースモーカーの大島理森国対委員長と鈴木政二参院国対委員長はひそかに国会内で顔を見合わせニヤッと笑った。

 「もし、たばこ税増税の法案が出たら(審議せずに)つるしてしまおう…」

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