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2008年12月10日(水) 00時00分

<学力国際調査>低下歯止め 「ゆとり教育」評価で二分毎日新聞

 07年に実施された国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)で、日本の小中学生の平均点は前回以上となり、意欲も上向きつつあるとの結果が出た。テストを受けたのは、学力低下の元凶とされた「ゆとり教育」で学んだ子どもたち。授業時間も学習内容も増やす新学習指導要領への移行が来年度から始まるが、「ゆとりでも学力低下に歯止め」との結果が出たのはなぜなのか。

 元文相の有馬朗人・日本科学技術振興財団会長は「『脱詰め込み』のもと、着実に学力がはぐくまれていることがわかった」と強調する。前回03年の結果などから学力低下が指摘され、「脱ゆとり」の指導要領への改定につながったが、有馬さんは「日本の学力はずっとトップレベルで、下がったとの認識自体が間違いだ」。これまでの順位低下は、参加国の増加が原因と見ているという。

 6位から3位に上がった中2理科については「総合学習導入で授業が減ったが、相当の底力がある。教員の努力や国による理科支援員の派遣も、下支えになった」と評価する。

 ただ、勉強への意欲は特に中学生で低い。「知識を教えすぎるので、面白さより苦痛が先にたつのかもしれない。成績上位の台湾や韓国でも同じ傾向がある」と分析した。

 一方、「分数ができない大学生」の共著がある西村和雄・京大経済研究所教授は「1、2位グループの点数とは大きな開きがあり、世界トップクラスとはいえない。成績低下は30年近く続いたゆとり教育が原因だ」と厳しい見方をする。

 勉強の意欲が高まらないのは、学力評価におけるペーパーテストの比重を低めたことが原因とみる。「89年改定の指導要領は、学習への態度や関心を評価に加える『新学力観』を導入したが、これをやめるべきだ」

 そのうえで「トップに返り咲くには、総合学習をやめ、大学入試の科目も見直して総合的な改革をしない限り難しい。ただ今後は授業時間も増えるので、これ以上下がることはないだろう」と結論づけた。【山本紀子】

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