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2008年12月10日(水) 22時02分

負担金支払い見直し…橋下知事の発言が波紋産経新聞

 道路建設など国が行う事業で、地方が一定の割合を負担をする「国直轄事業負担金」について、大阪府の橋下徹知事が支払い見直しを宣言したことが波紋を広げている。有識者らは「財政難の中、国直轄事業の負担金は当然見直すべきだ」と橋下知事の姿勢を評価する。一方、負担金は地方財政法で地方自治体が支払うことを義務づけられているだけに、国や府の担当者は「負担金の支払い拒否は想定外だ」などと、戸惑いを隠せない。

 「国に対する支払いを一度見直したい」

 橋下知事は3日の定例会見で、国直轄事業負担金について、支払い拒否も視野に入れた見直しを宣言した。

 国が管理する道路を建設したり、河川を整備したりする場合、地方にもその恩恵があるとして、自治体にも負担が求められる。負担金は、地方財政法で支払う義務があり、道路法や河川法などそれぞれ支払い割合が決まっている。

 府では、府北部を走る国道1号のバイパスとして建設が進む第2京阪国道や、大阪市南部を流れる大和川などの整備事業に、平成21年度で約425億円の負担が見込まれている。

 ところが、橋下知事は「府のインフラ(基盤)整備は予算を抑えているのに、国が思ったとおりに金をかけて事業をするのは納得できない」と疑問を投げかけた。

 この発言を受け、府庁内では負担金に関する予算要求をいったん白紙に戻す部局も出始めた。道路事業の担当者は「法律に負担金の支払いが明記されており、拒否は想定していなかった。府議会の議論や知事の今後の指示など動向を見極めたい」と対応に苦慮している。

 一方、国土交通省近畿地方整備局の幹部は「国直轄事業は府民にとっても必要な事業。府が財政的に厳しいのであれば、要望を受けて配慮したい」と理解を求める。

  ×  ×  ×

 負担金の支払い拒否については、違法性を指摘する声もある。橋下知事もこの点を認識しており、「法律の規定に照らせば違反だ」としたうえで、「府がこのような厳しい財政状況の中、支払いを拒否したとしても、違法性はないと思う」と持論を展開する。

 ただ、「法律上は負担金を支払わなければならないので、仕組み自体を考え直したい」とも述べており、国側と直轄事業について精査し、当面必要がない事業をやめるなど法に抵触しない範囲で負担金支払いを見直すことも示唆する。

 奈良女子大の澤井勝名誉教授(地方財政論)は「国直轄事業の負担金を支払わなかったとしても罰則規定などはないが、国との関係性からこれまで地方は支払い続けてきた」と説明。そのうえで「『国から押しつけられた』と受け止められることが多く、橋下知事の発言も理解できる。ただ、地方も利益を受けることから、国と地方がきちんと協議し、事業を決めるべきだ」と提案する。

  ×  ×  ×

 橋下知事の発言に対し、賛同する声も出ている。

 元自治官僚で前鳥取県知事の片山善博・慶応大教授は「財政難の中、国直轄事業や国所管法人への負担金は当然見直すべきもの。橋下知事には、どんどんやってもらいたい」とエールを送る。

 自身も知事時代に、国交省と掛け合い、国直轄事業を縮小させたり、総務省関連の公益法人への負担金支払いをやめるなど、積極的に見直しを図った。その経験を踏まえて、片山氏は「国は表立っては批判してこないだろうが、担当部署にはいろいろと言ってくるはず。一つ一つの事業や法人について、本当に府民の利益になるかどうか、十分精査してほしい」としている。

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