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2008年12月09日(火) 10時04分

検索エンジンの使われ方から企業コミュニティの活性化状況を推測するjapan.internet.com

ロボット型の検索エンジンでは、大雑把に、

・コンテンツを集めてきて(クロール)、取り出しやすいデータに変換しておく(インデックス化)
・ユーザーの入力した単語に対して、生成されているインデックスをもとに応答画面を表示させる

この2つが、基本構成要件だ。

これらが非同期で個別に処理されることで、「たくさんの人が同時に利用しても、システムにかかる負荷・コストを大幅に抑制できるが、その反面、リアルタイムで情報の更新はできない。また、サービス提供会社の都合で表示順序や対象ページも知らない間に変更されてゆく」というインターネット上での検索エンジンの特性が一般的になった。(たとえば銀行のオンラインシステムや新幹線の座席予約システムでタイムラグや誤差、検索漏れがあれば、いろいろな騒ぎが起きることは想像に容易い)

反対に、検索対象コンテンツ自体を人々が自発的に生み出すような仕組みも人気だ。FAQ コミュニティと称されたりする。国内では、はてな、Okwave などが代表格だ。

これは「集めたコンテンツ」を「要求に合わせて絞り込んで表示する」という検索エンジンの手順とは逆で、「要求があったら」、「対応するコンテンツを用意する」というプロセスを経て成り立つサービスだ。

手順としては一般的なデータベースシステムから情報を検索する場合と同じだが、利用者がリクエストを出した時点では、応答すべき情報がないことが決定的に違う。

利用者が知りたい情報について、誰かが親切に整理して回答してくれる可能性がある。さらに質疑応答や別の人からの回答も追加されたりするかもしれない。しかも、質問をしてない人が読んでも参考になることも多い。

反面、誰ひとり回答してくれずに結果を得られなかったり、期待する返答でなかったり、悪戯されたりする可能性もある。企業コミュニティにおいては、そういった悪意をもったメンバーは皆無となるだろうから、社内のノウハウを引き出したり、見識のある人・関心のある人を見つけ出すには、うってつけのサービスだ。

前回の稿では、検索エンジンの細分化が進行していることを述べたが、以下のサイトは利用者の意図するテーマに応じて検索対象を絞り込んだ例だ。

・SpySee:人物にまつわる情報に限定
・Newswatch:対象コンテンツの特定サイト内検索エンジン ASP サービス
・Google Map:住所や目標物をキーワードに限定して、該当する場所を地図にマッピングして表示

このほかにも、Blog、ニュース、企業情報などに限定したサービスが数多く生まれている。また、検索結果を効率的に表示させる機能については、Google のヘルプセンターを見ると多彩な利用ケースを想定して、検索結果を提供できるようになっている。

これは、情報量が爆発的に増大している中、利用者の目的にあったコンテンツを効率的に探し出すためには、ごく自然な流れだ。当然、膨大な情報から必要な情報を得るための工夫であり、情報がさほど多くなければ利用者から求めらることも少ない。

当社の企業コミュニティにおいては、コンテンツがゼロから徐々に情報が蓄積されていく中、検索機能が役に立つと実感できたのは、Blog や報告書、ファイルなどのコンテンツ件数が総数で1,500件程度を超えたころだ。

それまでは、知っている情報については、頭で記憶していたディレクトリ(配置場所)をたよりに探し出し、知らない情報については、キーワード検索しても、満足な結果が得られなかった。

コンテンツ量がある「臨界点」に達すると、記憶に頼ってコンテンツを探すことが大変面倒になってくる。また、何気なくキーワード検索をしても「こんな情報もあったんだ」といった小さな感動をもたらす結果が返ってきたりする。

検索結果に想定していない情報を見つけることも増えてゆく。ここを超えてからが、企業コミュニティの真骨頂だ。コミュニケーションを楽しむ、人間関係を円滑にするといった福利厚生的な道具、あるいはスケジュールや書類を管理するためのグループウエアから脱皮して、メンバーの知識・経験を結集した企業固有の知識情報システムに進化することになる。

検索機能がよくつかわれているか否かは、企業コミュニティの活性化度合いを測る一つの指標になる。

【当コラム執筆は、Looops Communications 取締役副社長の福田浩至が担当しています】

記事提供:株式会社 Looops Communications(ループス・コミュニケーションズ)

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