2008年12月09日(火) 12時58分
「酒蔵ファンド」で考えた投資の基本(Oh! MyLife)
「お金とお酒のいい関係」というタイトルのサロン(セミナー+交流会)が、12月3日、都内で開かれた。
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いつも朝方まで飲んで、散財してしまう僕にとって、お金とお酒は「いい関係」などではなく、むしろ水と油みたいな関係だった。
「いったい、どこがいい関係だよ」と突っ込みたい気持ち半分で会場を訪れたが、見ごたえのある面白いセッションだった。
対談者は、著名ファンドマネジャーで、Oh! MyLifeでも現在連載中の、レオス・キャピタルワークス社長の藤野英人氏と、音楽を中心に投資してきたミュージックセキュリティーズ代表の小松真実(まさみ)氏。モデレーターは環境プランナーの飯島ツトム氏。
まず、モンスーン地帯の日本では、カビを上手に管理する技術から、酒、味噌、しょうゆなどの製品が生まれ、それらが祭や政治(まつりごと)に大きな役割を果たしたこと、造り酒屋や米問屋が海運・金融・建築などの産業分野に影響力を行使するようになったこと──など、酒・米・カネの歴史的な結びつきの強さを紹介した後、小松氏が新たに始めた「酒蔵ファンド」についての説明に入った。
「酒蔵ファンド」とは、純米酒をつくる酒蔵に1口5万円を投資するファンドのこと。
純米酒をつくるには、良質なお米を必要十分量、購入しなくてはならない。ところが銀行にとって、「仕込んでいる最中(=熟成中)の米には担保価値がない。不良在庫と見られてしまう」(藤野氏)ため、銀行からの借り入れはむずかしい。そこで、この銀行が“価値を認めないプロセス”に、ファンドが資金を投じ、「おいしい純米酒」づくりに資金面で貢献しようというのが、このファンドの狙いという。
9月に募集した「全量純米蔵ファンド2008」はさいわい10月末までに、目標額だった3335万円を投資家から集めた。これらの資金は、全国11蔵の米購入費用に充当する。
もちろん、投資家にとって、投じたお金のリターンは確実というわけではない。しかし、投資家は定期的に酒蔵を訪ねて、日本酒の造り方を学び、また飲み方を教わる。その年に生産された最高級の日本酒ももらえる。「日本酒づくり」という日本の伝統文化の保護・継承に力になっている満足感もはずせない。
数値化された「エコノミック・リターン」だけではなく、ソーシャル・リターン、あるいは感情的なリターンを得ることができるのだ。投資の原点というべきものが、この「酒蔵ファンド」には秘められている気がした。
(記者:朴 哲鉉)
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