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2008年12月09日(火) 12時03分

ビッグ3は原点回帰を目指せ!Oh! MyLife

 米自動車大手3社(ビッグ3)に生き残る道はあるのか? 深刻な経営危機に直面するビッグ3は米政府の救済を受けることになるのか、または連邦破産法のもとで破たん・再建の険しい道をたどることになるのか、今、重大な局面にさしかかっている。

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 政府による救援にせよ、破産法申請による再建の道をたどるにせよ、再生のカギは燃料電池車や電気自動車など環境対応車の開発にあることに異論はないだろう。

 11月末に東京・明治神宮外苑で開かれたトヨタ自動車による「クラシックカーフェスタ」に興味深いクルマが展示されていた。「T型フォード」より6年早い1902年にアメリカで発表された、「ベイカー エレクトリック」という電気自動車だ。青色に塗装された優美な姿で訪れた人びとの目を引いていた。

 このクルマは出力1馬力、時速40キロの走行が可能だったといわれる。また、初めて回転部にボールベアリングを使用し、駆動系統にベベルギア(傘歯車)を採用するなど当時の先進技術で群を抜いていた。

 その隣にはカール・ベンツが1886年に発明した世界初のガソリン自動車といわれる1人乗り3輪車が展示されていた。それは「ベンツ パテント モトールヴァーゲン」という名の自動車先史時代の乗り物だ。

 1000ccの単気筒のガソリン・エンジンで駆動する、この“馬なし車両”は時速15キロで走ることが可能だったといわれる。

 その当時のアメリカでは、ガソリン自動車はすぐには普及しなかった。ジョージ・B・セルデンという特許弁理士がガソリン自動車の基本特許を持っていたので、ガソリン自動車を造って売るには特許使用料を支払わねばならなかったからだ。

 一方、電気自動車は静かで、始動にクランクを回す必要がないうえに、変速機がないのでギアチェンジが不要で運転が楽だと人気が高かった。とりわけ「ベイカー エレクトリック」は人気車だった。

 ところが、1903年にフォード・モーターを設立したヘンリー・フォードは、セルデン特許の無効を訴えて1911年に勝訴し、ガソリン自動車に特許料を払う必要はなくなった。電気自動車の運転は楽だが1回の充電で走ることができる距離が80キロと短かったため、「ベイカー エレクトリック」は1915年には生産を終了した。

 1908年に発表された「T型フォード」は規格部品による流れ作業生産により生産コストを大幅に下げることに成功し、ガソリン自動車はたちまち世界の主流となった。

 しかし、繁栄の世紀を走りぬいたビッグ3は環境対応車で出遅れ、今日の危機を迎えた。もう一度、自動車幕開け時代の原点に戻って再生を目指すことが望まれる。

(記者:矢山 禎昭)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081209-00000000-omn-ind