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2008年12月09日(火) 22時16分

「内定取り消します」 突然の電話に言葉も出ず産経新聞

 「申し訳ありません。内定を取り消すことになりました」。大阪商業大4年、山本紘子さん(21)は今年8月17日早朝、設備機器販売会社から、携帯電話に連絡を受けた。

 就職活動を終え福岡市の実家に帰省していた。寝起きの頭で何が起こったのか理解できなかった。業績悪化という取り消し理由や、10日後に会社で説明会を開くという話を淡々と説明された。「信じてたのに、なんで…」。その後は言葉が続かなかった。

 4月の就職説明会。上下に変動のある経常利益表に心配そうな顔をすると、採用担当者は「波が落ちたら次は上がる。扱っている商品が多いから大丈夫」と太鼓判を押した。「4日くらい眠れない日もあるけど、やった分だけ見返りがあるよ」。別の女性担当者のやる気に満ちた姿に、将来の自分を重ねた。

 「親にどう話そう…」。電話を切った後、真っ先に頭に浮かんだ。出勤前の父親に「内定取り消しになった」と打ち明けた。会社で人事担当を勤める父親は驚いた様子だったが、最後には「派遣でも契約でもいいからやりたいことを見つけなさい」と言われた。「どうしようもない時は、頼っていいから」。優しい言葉に子供のように泣いた。

 東京で開かれた内定取り消しの説明会には全国から約30人が集まった。「今年度は50億円の赤字見込み。どうにもなりません」。ひたすら頭を下げる担当者がいた。再就職活動費として30万円が振り込まれ、次の就職先へ持っていく「配慮書」と呼ばれる推薦書をもらった。

 9月に大学のキャリアサポート室に報告に行くと、担当者は親身になって相談に乗ってくれた。次々に求人票を持ってきて「小さな会社だけど、優良企業だから倒れる心配はない」「ここなら山本さんがやりたい仕事ができるかも」。熱心な姿勢がうれしかった。「もう一度就職活動してみよう」。自然にそう思えた。

 山本さんはその後、3社から内定をもらった。再就職活動中、内定取り消しを受けた会社の採用担当者と何度も電話で話した。面接のアドバイスから、山本さんの長所や短所を一生懸命考えてくれた。2次、3次と選考を進むに連れ、一緒になって喜んでくれた。「今思うと、取り消しを伝える社員の人もつらかったと思う」

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