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2008年12月09日(火) 01時58分

米トリビューン社危機、経営環境の厳しさ反映読売新聞

 【ニューヨーク=佐々木良寿】米有力紙ロサンゼルス・タイムズやシカゴ・トリビューンなど新聞12紙、テレビ局23局を傘下に置くメディア大手のトリビューン社が、破産申請の可能性を含む経営危機に直面していることが7日、米紙の報道で明らかになった。名門紙の窮状は、米新聞界の置かれた経営環境の厳しさを物語るものだ。

 米各紙は、インターネットの興隆を背景にした部数低迷、広告収入の減少に頭を痛め、コスト削減などで苦境からの脱出を図ってきた。だが、未曽有の金融危機が追い打ちをかけた。

 トリビューン社は昨年、地元シカゴの不動産王サミュエル・ゼル氏による買収提案を受け入れ、身売りした。新経営陣は、人員削減や資産の売却で経営再建を図ってきたが、広告収入の減少で債務は逆にふくらんだ。

 同社が、実際に連邦破産法第11章(日本の民事再生法に相当)適用を申請するかどうかは不明だが、報道によれば、債権者との交渉は難航しているという。

 米新聞界は、収入の9割前後を広告収入に頼ってきた。米新聞協会の統計によると、広告収入は過去6四半期連続で前年同期比割れとなった。下げ幅は、今年度第1四半期が12・85%、第2四半期も15・11%と大幅減で、ニューヨーク発の金融危機に見舞われた第3四半期は、同協会が統計を取り始めた1971年以降最悪の18・11%を記録した。

 9月末にはニューヨークで創刊7年目の保守系紙サンが廃刊に追い込まれ、ボストンの名門紙クリスチャン・サイエンス・モニターは来年4月から事実上のネット新聞に移行する。ニューヨーク・タイムズ社は11月下旬、手元資金を確保するため、四半期ごとの株式配当を75%近く減額する方針を発表した。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、資金難に直面している新聞社は全体の20%を超す。各社は、記者を含む人員削減を柱に生き残りを図るが、コスト減だけでは経営再建の道筋が見えない状況だ。

 地方紙54紙を抱えるメディアニューズ社CEO(最高経営責任者)のディーン・シングルトン氏は10月、フロリダ州で開かれた経営者の会合で、グループ紙間で編集作業の一体化を進める方針を示した。今後、業務提携や業界再編の動きが加速するのは必至と見られる。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081209-00000001-yom-bus_all