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2008年12月09日(火) 21時22分

広島の小1女児殺害控訴審 判決要旨産経新聞

 広島市の小1女児殺害事件で、9日の広島高裁判決の要旨は次の通り。

 【主文】

 原判決を破棄する。本件を広島地裁に差し戻す。

 【理由】

 ■1 死体検案書の証拠請求却下の違法性 (略)

 ■2 前歴関係の証拠請求却下の違法性  (略)

 ■3 訴因変更許可の違法性

 本件の起訴事実は被告人が平成17年11月22日、アパート自室で犯行に及んだというものである。1審第5回公判で、検察官は起訴事実のうち「アパート自室で」とあるのを「アパートおよびその付近で」と改める訴因変更を請求し、地裁は許可した。この訴因変更許可に法令違反はない。

 しかし職権で調査すると、検察官が訴因変更を請求したのは犯行場所を自室とする証明がおぼつかなくなったためと考えられ、その原因は検察官の不手際だけでなく、地裁が審理を尽くさなかった違法があると言わざるを得ない。

 被告人方から押収された毛布に被害児童の毛髪が付着していることから、被告人の供述調書に毛布を自室から出していないという供述があり、それが信用できるのであれば、犯行は自室で行われたと認定できる。

 ところが地裁は調書の証拠請求を却下した。犯行場所が屋外か自室かという点は本件の争点および犯情を判断する上で重要で、地裁が却下したのは不可解だ。

 犯行場所を確定するために、調書を取り調べる必要性は高かった。しかし地裁が弁護人に対し調書の任意性を争う理由について釈明を求めず、検察官に対し任意性について立証する機会すら与えず、証拠請求を却下したことは証拠の必要性についての判断を誤り、合理的な理由なくして不当に却下したと言わざるを得ない。地裁は審理を尽くしておらず、訴訟手続きの法令に違反している。

 犯行場所を地裁判決と同様に「アパートおよびその付近」として被告人の刑を量定する場合、犯行が屋外でなされた場合と屋内でなされた場合とでは、その犯行態様は大きく異なると考えられる。通行人から見える場所でわいせつ行為をしたとすれば、被告人の責任能力に疑問が生じたり、周囲をはばかることなく犯行に及んだとして犯情がより悪いということになる可能性もある。

 調書を取り調べれば犯行場所について真相が解明される可能性があり、そうすれば被告人が否認しているとはいえ犯行態様が相当程度明らかになると考えられることなどにかんがみると、犯行場所をあいまいなままにして、検察官および弁護人双方の量刑不当や弁護人の事実誤認の主張を判断するのは相当でない。

 地裁は調書の証拠能力について主張すらさせないで、証拠請求を却下しているが、これにより犯行場所について事実誤認をしたのではないかと考えざるを得ない。1審において調書に証拠能力があるか審理するとともに、その結果に基づいてさらに慎重に審理を尽くす必要がある。

 ■4 結論

 よってその他の主張についての判断を省略して、原判決を破棄し、本件を広島地裁に差し戻す。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081209-00000594-san-soci