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2008年12月09日(火) 21時22分

木組みの取水施設や木簡出土 奈良・薩摩遺跡産経新聞

 奈良県高取町の薩摩遺跡で、奈良〜平安時代(8〜12世紀)の灌漑用ため池に設けられた木組みの精巧な取水施設や、ため池を設置した人物名を記した木簡が見つかり、県立橿原考古学研究所が9日発表した。木簡は、ため池の完成式典で読み上げられた“式辞”ともみられるという。この時期の取水施設は、国内最大のため池「狭山池」(大阪府大阪狭山市)でしか見つかっておらず、当時の農業の実態が分かる貴重な資料になりそうだ。

 ため池は南北約90メートル、東西約40メートルにわたって検出。取水施設はため池の北端に設けられ、角材をくり抜いた木樋(もくひ)の一部(長さ1・2メートル、幅50センチ)が見つかった。水の供給量を調節するための栓(せん)の一部も確認され、構造的には現在のため池の取水施設と共通するという。

 木簡には「この池を作り終わると、神秘的な現象が起こった。波多(はた)地域の里長である檜前主寸(ひのくますぐり)がこの池を作った」と記されていた。

 和田萃(あつむ)・京都教育大名誉教授(古代史)は「木簡は、ため池完成セレモニーの際に読み上げたものかもしれない」と指摘した。現地説明会は14日午前11時から。近鉄市尾駅から東へ徒歩15分。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081209-00000593-san-soci