記事登録
2008年12月09日(火) 20時24分

「また苦しみ長引く」遺族ら戸惑い 広島の小1女児殺害控訴審産経新聞

 果たして「真実」にたどりつけるのは、いつになるのか。広島市の小1女児殺害事件で、審理を広島地裁に差し戻した9日の広島高裁判決。被害者が1人の事案での死刑適用の是非が注目されたが、判決は「犯行場所をめぐる審理が尽くされていない」と指摘するにとどまる肩すかしの内容だった。3時間余りに及んだ言い渡しの間、不規則発言を繰り返すホセ・マヌエル・トレス・ヤギ被告(36)。予想すらしなかった判決に、遺族からは「また苦しみが長引く」と戸惑いの声があがった。

 ヤギ被告は黒の上着にジーンズ姿で、胸の前で手を合わせながら入廷。ほおを紅潮させ視線を落ち着きなく泳がせるなど、緊張した様子で被告人席についた。

 当初は通訳が読み上げる判決にじっと聞き入っていたが、後半になると様子が一変。自分の顔を何度も強く殴り、スペイン語で「私はうそをついたことはありません」と泣いて訴えた。

 楢崎康英裁判長に注意され、一度は「すいません」と応じたものの、自身の公判供述の信用性について疑問を呈する部分などが通訳されると、床や頭上に目をやりながら「あなたはあいりちゃんですか」とつぶやいたり、かたわらの刑務官を指して「この人が音を立てている」と訴えるなど意味不明の言動を繰り返し、たびたび公判を中断させた。

 また、突然席を立って歩きだそうとし、刑務官に静止される場面も。言い渡しが終わると、うつろな表情で目に涙をためながら、刑務官に連れ出されるようにして退廷した。

 一方、傍聴していた木下あいりちゃんの父、建一さん(41)は、裁判長が「差し戻し」と述べた直後、ひざの上に置いた遺影をぎゅっと抱き寄せた。1審の無期懲役判決にショックを受けた経験から、今回は「死刑は難しいのかもしれない。無期懲役以下でも受け入れよう」と心に決めて臨んでいたが、差し戻し判決に驚きを隠せなかった。

 閉廷後、広島市内のホテルで会見に臨んだ建一さんは、ときおり目を潤ませながら「想定外で驚いている。複雑な思い」と疲れ切った表情。「さらに判決が長引き、遺族が苦しめられるのか」と消え入りそうな声でつぶやいた。

 また、ヤギ被告が法廷で、あいりちゃんが目の前にいるかのように話したことについては不快感をあらわに。「あいりは、生前と同様に私のひざの上にいる。決して彼の周りにはいない」と、このときばかりは語気を強めた。

【関連記事】
広島小1女児殺害で審理差し戻し 広島高裁判決
「犯行場所を事実誤認」 広島の小1女児殺害控訴審
友梨さん詐欺、豪遊の一方で6月から家賃滞納
1年半、高級ホテルを定宿 大阪の友梨さん事件詐欺
大阪の友梨さん不明「助けられる」と7000万円詐取 2人を逮捕

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081209-00000587-san-soci